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第11話 撮影のお手伝い(2)

「それで、今日はどこへ行くの?」 「横浜」 「よ、横浜……」 引きこもりの僕にとっては隣県へ行くだけでもかなりの遠出に感じられた。 勝手に都内だと思っていたからちょっと焦った僕は彼に尋ねる。 「あの、電車で行くのかな……?」 「いや、俺の車」 (よかった。いきなり電車で移動するのはちょっと怖いし) 「お前電車乗れないんだろ?」 「え、どうして知ってるの」 「お父さんから聞いた。電車乗ると具合悪くなるから、出掛ける用事があったら車出してやってほしいって」 「ああ……」 (そういうことか。それにしても、蒼司くんにそんなこと頼むなんて父さん図々しすぎ! まあ、出掛けることは今のところほぼ無いけど……) ◇◇◇ そして蒼司の運転する車に乗ること40分ほどで目的地に着いた。 「こんなところにプラネタリウムができたなんて知らなかった」 やって来たのは街中のビル二階に新しくオープンしたプラネタリウム。蒼司はまず外観を撮影し始めた。ビルの横に球状のドームがくっついているような不思議な建物だ。外階段から二階へ上がり、中に入った。 時間ごとに上映されるプログラムが数種類あるようで、まるで映画館のようだ。チケットは蒼司が既にネットで予約済みで、席に着く前に飲み物を購入した。 オレンジとブルーのボトルドリンクは、不思議なことに発光するという。 「光るのこれ?」 「未来っぽい飲み物だな」 そして蒼司くんについて予約の席まで来ると、そこはプレミアムシートで、円形のベッドのような形をしていた。 「ここに寝転がって見るの?」 「そう。コレ目的で来たんだ。さあ、今度はお前が撮って」 「上手く撮れるかな……」 「まぁ、無理だろうな。ここはちょっと薄暗いから。俺がシャッタースピードとISO感度の設定するから、とにかく脇締めてぶれないようにだけ気をつけてくれ」 撮る角度なども全部指示してくれたから、僕は本当にただ手ブレに気をつけてシャッターを押しただけだった。何十枚か撮って、蒼司くんがチェックする。 「うん、どれかは使えるだろ。ありがとう」 「えっ、あ、うん。どういたしまして」 (わー、初めてお礼言われちゃった!) 「蒼司くんって、ピンスタの撮影のとき自分で構図とか決めてるの?」 「ん? そりゃそうだろ。自分のアカウントだからな」 「そうなんだ。プロのカメラマンさんのを載せてるのかと思ってた」 「いや、モデルの仕事とは別だから。完全に個人の趣味。友達がカメラ好きだから撮影はしてもらうことあるけど、どこで何をどう撮るかは俺が決めてる」 「へぇ~! そうなんだ」 (僕はもしかするとカメラマンさんの作風に惹かれてるのかもと思ってたけど、やっぱり蒼司くんの感性が気に入ってたってことかぁ) 「そろそろ始まるな。上映中も撮影可能だけど、後は寝転がりながらスマホで撮るからカメラはもういい」 「あ、うん」 二人で寝転がると、まるで恋人同士みたいでドキドキする。同居しているとはいえ、彼の部屋には立入禁止を言い渡されているから寝ているところを見るのなんて初めてだ。 プラネタリウムは子どもの頃に僕が見たのと全然違って、LEDの明かりですごく色鮮やかだった。 最初はその美しさに感動していた。だけどプログラムの途中でふと横を見ると、蒼司のきれいな横顔が目に入る。気になって仕方がない。 この状態で写真を撮ったら、まさに「彼氏とベッドでごろごろする休日」みたいな構図になる。 (一枚だけ、こっそり撮ってもいいかな?) 僕がそんなことを考えていたら、横目でジロリと睨まれた。 (あ、やばい怒られる……) 小声で「なんだ?」と聞かれて、耳打ちする。 「蒼司くんの顔撮ってもいい?」 彼は一瞬嫌そうに眉をひそめたが、頷いて視線を天井に戻した。 (やった!) 僕は慎重にシャッターボタンを押す。薄暗くて微妙な写真。だけどそれがまた「彼と過ごす日常」っぽくて良い感じだ。 (Aoのファン及びフォロワーの皆様――この角度で生のAoを見る罪をどうぞお許しください!)

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