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【番外編】ドSのイケメンにいじめられる事でしか摂取できない栄養がある(2)

そして彼と暮らすようになって二度目のヒートが近づいてきた。 僕は「今回こそは」と勝手に身構えていた。しかし、そんな僕に蒼司はこう言った。 「蓉平、ヒート近いだろ。そろそろ実家に帰るか?」 「え……?」 今度こそ蒼司と出来ると思って期待していた僕はそれを聞いて愕然とした。 (なんで――? 僕としたくないってこと……?) 蒼司と婚約するまでに色々すれ違いがあった。だから思ったことはちゃんと伝えないと、と僕は勇気を振り絞った。 「……蒼司くん。僕、ヒート中も蒼司くんと一緒にいたいな。ダメ?」 恥ずかしくて顔から火が出そうだったけどちゃんと伝えた。すると、彼は少し困ったような顔をした後頷いた。 「わかった。蓉平がそう言うなら一緒に過ごそう」 (良かった――断られなかった……) ホッとした反面、僕からそう言わなければヒート中一緒に過ごしてくれる気が無かったのだと思うと落ち込む。 (どうしたらいいんだ……) 別に婚約したからと言って、必ずしもセックスしないといけないというわけではない。だけど、自分に魅力が無いのかなとか、やっぱり年が離れすぎなのが嫌なのかなとか考えてしまう。 「はぁ……」 結局その後のヒート期間中はずっと蒼司はアルファ向けの抑制剤を飲んでいた。僕も抑制剤を飲むように言われ、断れずに服用した。 もちろん、エッチは無し。 お風呂あがりに平然と隣でテレビを見ている蒼司にイライラして、僕はリモコンを奪った。恥ずかしいのを堪え、パジャマの前をはだけさせて迫ってみる。向かい合わせになって彼の膝の上に座った。 「蒼司くん……薬飲んだけど、効かないみたい。すごく熱いんだ。お願い、助けて……」 「なに? 大丈夫か」 そう言ってやっと体を触ってくれた。だけど、介護? って思っちゃうくらい優しくて……一言で言うと物足りなかった。 「楽になったか? 具合悪くなったら呼べよ」 口と指で慰めてくれた後、僕をベッドに横たえた蒼司は部屋を出て行った。 自分の浅ましさが嫌になるけど、こんなんじゃなくて前みたいにちょっと強引にして欲しいのに――。桂木さんの匂いに怒って押し倒してきた時の勢いはどこへ……? しかも、今回は彼の体には触らせてもらえなかった。 ヒート中の恋人を前にしながら一度も服を脱がなかった蒼司に、僕はすっかり自信を失ってしまった。 ◇◇◇ 僕はヒートが明けてすぐに我慢できず電話で訴えた。 「ずっとこんな調子でね、もうどうしたらいいかわかんなくて……」 『あのねえ、それでなんで私に電話してくるわけ? あんたと連絡取ってるのバレたらAoに怒られるの私なんだけど。もう切っていい?』 「そんなぁ、冷たいこと言わないでよアンジュちゃん!」 僕は悩んだ末、オメガ女子のアンジュに電話で相談することにした。 中西さんとはまた違う女子目線のアドバイスをくれるんじゃないかと思ったのだ。 『大体あんた、私に嫌な目に遭わされたのによくそっちから電話して来れるよね。変なヤツ』 「え、でもそれはもう解決したから……」 (それに僕、冷たくされるの全然なんともないし) 陰でコソコソ言われたりするのは対処のしようがない。むしろアンジュのように直接罵ってくれる相手の方が和解してしまえば後腐れがないのだ。学校もまともに通えなかったので、こんなことを相談できるオメガの友人は他にいなかった。 「アンジュちゃんは美人だし、アルファの人に人気でしょ? ねえ、それでも相手が乗り気じゃ無いときってある? そういう時でもその気にさせる方法って無いの?」 『ちょ、ちょっと落ち着いてよ。悪いけど、私はAoの事その気にさせられなかったから今ここでこんな目に遭ってるんだから!』 「こんな目って?」 『……菜々にめちゃくちゃにされてんの。逆に聞きたいくらいだよ。どうやったらヒート中でもアルファを手懐けて大人しくさせられるわけ?』 「手懐けてるんじゃないんだってば。僕は蒼司くんとエッチがしたいのにして貰えないから悩んでるんだよ」 『もう、そんなにやりたいならいっそのこと他の男にして貰えば?』 「な、何てこと言うんだよ。他の男の人とエッチするなんて有り得な――……」 そのとき、ソファに座っていた僕の手からスマホが突如奪われた。 びっくりして後ろを振り返ると蒼司が立っている。彼はスマホをタップして僕に返し、人差し指を口に当てた。 (え……? 黙ってろって?) 『だーかーら、それもダメなら諦めなよ。あ! もしかしてAo、最近学部変わったりして疲れてるからEDになっちゃったんじゃない?』 スピーカーからアンジュの甲高い声が大音量で響いた。 (うわ、蒼司くんスピーカーにしたの!?) 僕はアンジュの言葉にサーっと血の気がひいた。 蒼司も聞いているのだ。早く彼女を黙らせなければまずい。 「そ、そんなことはないと思うな~! うん、違う違う」 『そーお? わかんないじゃん。あ、それならこれは? 蓉平のフェロモン普段からアレじゃん。だからヒートのときはキツすぎてもう、めちゃくちゃ臭いとか! きっとそうじゃない? あはは!』 アンジュは自分の発言にケラケラと笑っている。 ED呼ばわりされた上に婚約者である僕のことを臭いと言われ、蒼司の目は完全に座ってしまっていた。 僕は恐怖に凍りついてアンジュに返事が出来なかった。 『いやー笑った。ねえ、そんなことより聞いて! こっちは大変なんだよ。菜々って絶倫なの――って、もしもし蓉平? ねえ聞いてる?』

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