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1.ようこそ、学園島へ!
唐突だが、俺は転生者だ。
前世では20歳の大学生であり、友人たちとわりと好き勝手に生きていたのだが……飲み会の帰りに交通事故に巻き込まれ、そのまま呆気なく死んでしまった。
その後、俺は新しい家庭に生まれ変わり、何の変哲もない子どもとして、何の変哲もない人生を適当に生きていたのである。
どこにでもよくいる子ども。
ゲームが好きで、勉強が嫌いで、宿題をやらずに遊びに行って、親に叱られる普通の子ども。
家の手伝いだって小遣いが貰えないとやらないし、夏休みの最終日に泣きながら一ヵ月弱ぶんの絵日記を纏めて書くような、そんなしょうもない奴だった。
で、そんなしょうもない奴が今何をしているのかというと……。
講堂でフカフカの椅子に座って、理事長によるありがたーい式辞を聞かされているのだ。
「ようこそ、ミネルヴァ・アカデミーへ!」
理事長にしては妙に若い男が、壇上で長々と堅苦しい話を始める。
学園島ミネルヴァ・アカデミー。
それは日本海に浮かぶとある島が、一島まるまる学園の所有物となっている、ちょっと特殊な学園だ。
島の中心部に建つ巨大な校舎と、生徒たちが住む学生寮。
街には娯楽施設や商業施設が立ち並び、住人は全て教師陣、治安維持部隊なんかの学園関係者となっている。
一般人は許可証がなければ立ち入ることも出来ず、生徒は長期休暇か忌引きでもなければ島から出られない。
……何故そんな辺鄙な学校に入学することにしたのかって?
別に、俺はこの学園に願書を出して、試験に受かったからここにいるわけではない。
この学園は特別な才能を持つ生徒に入学許可証を送りつけてくるのだ。
入りたいからといって入れるわけではない学園。
それがミネルヴァ・アカデミー。
どうだ、変わっているだろう?
……え? 学園側が生徒を指定するなんてあり得ない、現実的ではない?
当たり前だ。
この世界は現実……元々俺の生きていた普通の世界とは違う。
BLゲームの世界なのだから。
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