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 one and only.  通称OAOは、前世の世界で販売していたBL系恋愛シミュレーションゲームだ。  物語の舞台となるのは全寮制の男子校、学園島ミネルヴァ・アカデミー。  ここに入学した主人公(男)が、個性豊かな男性陣と絆を深め、真実の愛を見つける……という内容で、アニメ化や2.5次元ミュージカル化も果たしている。  様々なグッズも販売されており、主に女性を中心に熱狂的な人気を博していた。  さて、前世での俺の性別は男であったわけだが……別にBLが好きな腐男子、というわけではない。  なら、どうしてこんなに詳しいのか? それはもちろん、姉貴が腐女子だったからである。  それも、自ら創作するタイプのお腐れ様。  この姉という存在に、俺は昔から逆らうことが出来なかった。  推しの恥になるようなことはしない。が信条で、美容やファッションに気を使い、仕事と趣味と推し事を両立させる完璧超人。  そんな姉貴が目に見えて忙しくなるのが、同人即売会が開催される時期なのである。  二次創作者として同人誌の発行をしていた姉貴は、サークルとしてイベントに参加することの方が多かった。  そうなってくると、必ず訪れるのが修羅場だ。  〆切までに漫画を描き上げて印刷所に持ち込まなければならない。しかし、このままでは間に合うかどうか分からない。  そんな時に強制招集されるのが、俺だったのである。  おかげでトーン貼りやベタ、影つけの技術だけは異常に上がった。  で、推しや作品に強い愛を持ち、完璧主義でもある姉貴は、作業を手伝う俺にもOAOの履修を求めた。  別にアシスタント作業をするだけなのだから、必要ないだろう。なんて口答えをしようものなら、林檎を握り潰せる握力でアイアン・クローを決められる。  逆らえば俺の頭が林檎のように粉々にされるというわけだ。  姉がゴリラだと弟は辛い。  そんなこんなで俺は姉貴の監視(ナビゲート)の元、全トゥルーエンドの回収と、アニメ版の視聴を終えているのである。  だからこそ、この世界がOAOの世界であると気付けたのだ。

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