赤城を呼び出すための餌として雨宮を人質にとった不良グループは、その後、何故か雨宮の身ぐるみを剥がし始める。 　BLという作品群の中ではありがちな展開らしいので詳しい詳細は省くが、危機一髪というタイミングで駆けつけた赤城によって、不良グループは全員ボコボコにされる。 　こうして雨宮を救出した赤城は、その想いを告げて両想いになり、騒ぎを起こした不良グループは全員退学処分となるのでした。めでたしめでたし。 　……どうしてこのシナリオに気をつけなければならないのか？ 　それはもちろん、俺の転生先であるこのキャラクターが、赤城と敵対する不良グループの下っ端として登場していたからである。 　ほぼほぼモブキャラなのだが、何故か不良グループのリーダーを差し置いて、俺が赤城にぶん殴られているスチルが存在するのだ。 　髪型、顔つき、背格好。左目の下の泣きぼくろの位置まで同じ。完全にアレは俺である。 　もしも前世の記憶が蘇っていなかったら、入学から一年と経たずに退学処分になっていた可能性があるというわけだ。怖すぎる。 　だからこそ、俺はその最悪の未来を回避するために行動をしなくてはならない。 　OAOの主人公及び攻略キャラクターたちに関わらない、不良とつるまない、モブに徹する。 　国宝級のイケメンがうじゃうじゃいるこの学園で、俺みたいな平凡顔の男に好意を向ける人間がいるのかは謎だが……。 　フラグに関しては立ちそうになったら考えればいい。 　とにかく、今必要なのは俺の当て馬ヤンキー化を回避することだ。 　いつの間にか、生徒会長の挨拶が終わっていたらしい。 　わぁっと上がる歓声と、割れんばかりの拍手の音で現実に引き戻される。 　生徒会長が手を振って壇上から降りた後、司会進行役から式の終わりを告げられ、俺たち新入生は講堂から退場するのだった。