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2.学生寮へ

 入学式が終わると、新入生たちはバスに乗せられて商業エリアの案内に連れ出される。  これから三年間、文具や私服、週刊少年誌から参考書に至るまで、全てをこの学園島内の施設で賄うのだ。  映画館やゲームセンターなんかの娯楽施設もあるし、休日はこの商業エリアの世話になる生徒も多いだろう。  ただ、問題は金銭についてだ。  この島内では、現金での支払いは出来ない。  買い物の全ては"マネポ"と呼ばれる電子マネーで行われるのだが……。  このマネポ、毎月一日に指定された金額が、生徒全員のスマホに配布されるのだ。  配布される基本の金額は全生徒一律だが……。テストの成績や部活動での活躍、ボランティア活動なんかでボーナスが付く仕組みになっている。  要するに、贅沢や無駄遣いがしたいなら、それ相応の対価が必要だと言うことだ。  ゲーム内では、このマネポを稼いで疲労度回復アイテムや好感度操作用のプレゼントアイテムが買えたが、まぁ、この世界で買える物にそんな効果は期待しない方がいいだろう。  商業エリアから船着場、海岸線をドライブして、バスは学園への帰路を辿る。  この島、本当に広いな……。  海も山もあるし、シーズンになればキャンプや海水浴も楽しめるらしい。  もはや学園ってレベルじゃねぇぞ。 「これで本日の日程は全て終了です! 夕食は十八時から二十二時までの間に学食で取ってください!」  寮の玄関前でバスを降ろされた俺たちは、誰とはなしに回転扉をくぐって中に入る。  エントランスホールでは、数名の上級生が受付を担当しており、慌ただしく新入生たちに部屋番号を伝えていた。  それにしても……コレ、本当に寮か? どう見てもお高いホテルじゃねぇか。  廊下に敷かれたいかにも高級そうな柄のカーペット、等間隔で置かれた休憩用のソファー、壁にかかる油絵と、見たこともない大きな観葉植物。  極め付きは、ホールの中央に鎮座する、大理石彫刻の乗った噴水だ。  エントランスホールだけでこの様相だぞ? どれだけ金がかかってるんだ。  なんだか怖くなってきて、俺はそそくさと受付に向かった。

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