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ピクニック エナ1
今日は週に一度の休診日だ。
僕がティムのドラゴン姿を見たいとねだったので、魔族の国を出て、近隣を覆う砂漠の真ん中にあるオアシスまで憑依して飛んで行く事になった。
ピクニックだ。嬉しいな。
ティムは一度行った場所になら瞬間移動が出来るけど、わざわざドラゴンになって飛んでくれると言う。
僕は朝からお弁当を作りマジックバッグに入れた。ティム、喜んでくれるかな?
ドナとともに待ち合わせ場所したエドナ診療所の前まで行くと、すでにティムとノンがいた。
「早いね?おはよう、ティム、ノン。僕、お弁当作って来たんだ。精霊用のお菓子もあるから後で食べようね。」
精霊は何も食べなくても生きていけるが、嗜好品として甘いお菓子を好む。昨日のうちに頑張ってブラウニーも焼いておいたんだ。
「えっ?エナがお弁当を作ってくれたのか?!う、嬉しすぎる・・・食べるのがもったいない・・・いや、食べたい!」
「何言ってるの?さっ、行こう。」
ティムが僕の肩を抱き、ノンがドナを抱っこして、魔族の国の中心部から離れた人気のない草原まで瞬間移動した。
「じゃあドラゴンの姿に戻るよ。」
ティムの体が光り体の輪郭がボヤけだんだんと大きくなる。次の瞬間には立派なドラゴンになっていた。
「うわぁ・・すごい綺麗・・・」
ドラゴン姿のティムも美しかった。見上げるような巨体を覆っているのは、青と緑が混じり合ったような色彩の鱗だ。太陽の光に反射してキラキラしている。
鋭角に尖った漆黒の角は後ろに流れるように鱗の間から生えていた。
完全なドラゴンの姿だが、目を見るとティムだ。
僕が見惚れているとティムが不安そうに言う。
「エナ?やっぱり怖い?人型に戻ろうか?」
「えっ?ごめん。あんまり綺麗だから見惚れてた。このままでいいよ?って言うかしばらくドラゴン姿のティムを堪能させて?」
「・・・本当に怖くないのか?」
「うん!ちょっと感動してるだけだから。」
「はぁ~安心した。エナの事を信じてはいたけど、万が一怖がられたらやっぱり悲しかったと思う。ありがとうエナ。ドラゴンのオレを受け入れてくれて。」
「ふふっ。そんな事でお礼を言われるとは思ってなかったよ。後で憑依した姿もみせてね?」
「あぁ。どうせならお互いに完全憑依もして、ティムノンとエドナの初対面もしよう。」
「そうだね。お互いのあらゆる姿を見たいもんね。」
僕がそう言うと、ティムは何かぶつぶつ言っている。
「くうっ!オレの番は常にオレを煽って来る・・・」
??何言ってるのかよく分からないから放っておこう。
僕もドナと憑依する。
ドナが僕の体に飛び込んで来ると、体中にドナの気配が満ちる。血が沸き立つような感覚とともに、髪の毛の色が柔らかめの金髪から白髪に変わる。
頭から生える猫耳と、尻から生える尻尾を伸ばし、体中を駆け巡った熱が集中した背中から、純白の翼を解放する。
憑依完了。
ドナの意識が僕の半分を支配するが、僕と肉体を共存している状態だ。
「あぁ、憑依した姿も可愛いな。まったく、本当にエナはオレの理想の番だよ。」
ティムの言葉に照れて赤くなっていると、僕の中のドナの声が頭に響く。
『エナはもっとティムに甘えなきゃ。もじもじしてるだけじゃなくてさ。まぁ、そんなエナも可愛いとか、ティムは思ってるんだろうけど。』
『う、うるさいな。だって、甘え方とか分からないし・・・』
『仕方ないか。恋愛にまったく興味なかったもんね。死ぬほど鈍いし。まっ、後で完全憑依したらティムノンに甘えようっと。』
『・・・お手柔らかに頼みます。』
さっきからノンにも色っぽい目で見られてて落ち着かないんだよね。見た目はドナの人型的な感じだから仕方ないんだけど・・・今は僕の意識もあるんだからね?!
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