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魔王城 エナ1
魔王城に瞬間移動で連れて来られてしまった。ドナはずっとノンの腕の中でふにゃふにゃだ。
いきなり部屋に瞬間移動するのは失礼だし、防犯上も良くないって事で禁止されているらしいので、魔王城の正面入口から入る。本当に僕が入って大丈夫なのかな?
ティムは門番さんに声をかけ、宰相的役割をしているシグ様に許可を貰って来て欲しいと言っている。
うぅっ、何か申し訳ない。僕なんかの為にすみません。
しばらく待っていると、門番さんが戻って来て「どうぞお入りください、との事です。」と言ってくれたので、僕はティムについて魔王城に入った。
廊下を歩いていると、カグラちゃんとイアンくんに遭遇。こっちに気付き駆け寄って来た。
「エナちゃん!本当にティムと付き合い出したのね?あ~良かった。心配してたのよ。エナちゃんが嫌がってたらどうしよう?って。ティムしつこそうだし。」
「カグラ、相変わらず失礼だな。」
「だってティム、力ずくでも手に入れる気満々だったじゃない?もしエナちゃんが嫌そうなら助けに行かなきゃ!って思ってたのよ。」
「ありがとうカグラちゃん。お心遣いに感謝するよ。そうだね、もし僕がティムの事が嫌なら大変だったかも?ティム、ストーカーになりそうだもんね。」
「お、おいエナ?例え話でもオレの事を嫌とか言わないでくれ。」
「プッ!ドラゴン族の王子も形無しね!エナちゃんが優位で安心したわ。」
「あっ、そうそう、イアンくんのお母さんも時々こっちに来てるんでしょ?マジョリカでお茶してるってランさんに聞いたよ?」
イアンくんが嫌そうな顔をして言う。
「あぁ、はい。とんでもない面子なんで毎回ハラハラしてますよ。あの四人で世界征服とかしかねないんで。」
「う、うん、本当にね。」
手を振ってカグラちゃんとイアンくんと別れ、ティムの部屋に辿り着いた。
早速二匹の世界に入っているドナとノンは放っておいて、ティムとこれからの話をする。
「ねぇティム、今日の夜に父さんたちと話す前に、大体の事を決めておきたいんだけど。」
「そうだな。まず今日あいさつをしてから、『息子さんをオレにください。』と父君とコウに言う。」
「ちょ、ちょっとそれは今言わなくても・・・」
僕の顔が赤くなる。
「あぁ、エナ、可愛い。抱いていい?」
「バカ!話が進まないでしょっ!今は今後の話だよ!」
「ふふっ、怒ったエナも可愛いなぁ。
そうだな、まずはリンにワープポイントについて聞かなきゃならない。それでどうにかなりそうなら、何としてでもワープポイントを最南の島とこっちを繋げるよう、魔王様に許可を頂く。どうやってもワープポイントを機能させるのが無理なら・・・」
「無理なら?」
「オレが魔力を上げて頑張るから、頼む!最南の島へ付いて来てくれ。週に何度でも瞬間移動するから!!」
「えっと、そんなに無理してくれなくてもいいよ?少ない回数でどうにかなるように考えよう。診療所を僕の代わりにやってくれる魔族がいないか探してみるし。」
「エナ!最南の島へ着いて来てくれるのかっ?!」
「うん、それはもう決心した。診療所もだけど父さんの事も心配だから出来れば週に一回は帰りたいけど。
それよりティムに聞いておきたいんだけど、ティムは王位を継いだりするの?」
「あぁ、その心配をしてたのか。逆に聞くが、エナは王妃になりたい?」
「無理。なりたくない。」
「なら、オレも王にはならない。」
「それで許されるの?」
「あぁ。最南の島のドラゴン族は王族で成り立っているからね。世襲制で王位を継ぐ者は子を成す必要がある。結婚して子を成す意思があるのに出来ない場合は、兄弟の子を養子にもらう事が出来るんだが、最初からその意思がない者は辞退するのがルールなんだ。
オレは昔から番を探していたからね。番が男だったり、女でも子を成す意思がないようなら、番優先で王位を辞退すると宣言してあるよ。親父もおふくろも了承済みだ。
まっ、もしエナが王妃になりたいっていうのなら、今の体制を壊してでもオレが王になるけどね。」
「そうなんだ・・・ティムは本当にそれで良いの?子ども欲しくない?」
「子どもよりエナが欲しい。エナがいればそれでいい。これはこの先何があっても変わらないから。オレを信じて?」
「・・・うん。分かった。」
「番を最重視するヤツは王族にたまにいるんだ。だから王位を継いだ者はなるべくたくさん子どもを作るんだよ。
そして例え王位を継がなくても、兄弟で支え合って最南の島を統治していくからね。オレは王より宰相のほうがいい。
それにドラゴン族は寿命が長いから、まだまだ親父が王を務めてくれるよ。もしかしたら次の王は弟か妹の子、つまり親父の孫かもしれない。」
「そっか、ちょっと安心した。ところでティムっていくつなの?ドラゴン族の寿命って・・・?」
「生まれて最初の十年は魔族や人族と同じように成長するけど、その後は十年で一歳年をとる感じかな?五十歳で成体になるんだ。魔族の十五歳と同じだね。あぁ、イアンが五十歳くらいだ。オレは八十五歳。魔族でいうと十八から十九歳ってとこ。
一般のドラゴンの平均寿命は五百歳~七百歳だね。契約精霊持ちだと一千歳くらい?」
「ちょ、ちょっと待って?八十五歳?!見た目で僕と同じかちょっと上くらいかなって思ってたんだけどっ??」
「だから魔族からしたら十八か十九みたいなもんだって!寧ろエナより年下だ。」
「えっと、うん。それは理解した。けどドラゴンってそんなに長生きするんだね。僕だけ老けるの嫌だなぁ・・・僕がおじいちゃんになってもティムは若いままなんでしょ?じゃあまた若い魔族と付き合えばいいよ・・・」
何だか辛いな・・・あっ、涙が出て来た。
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