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エナの実家 エナ

 何とかノンから引き離してドナを正気に戻し、僕の家へと憑依して飛んで行く。ティムはまだ僕の家に来た事がないからね。瞬間移動は一度行った所にしか行けない。 ティムは手土産にワインを手配していたようだ。どうせ父さんはご飯も食べてないだろうから、魔王城のシェフに頼んでおつまみになる物も詰めてもらう。お金を払おうとしたんだけど逆に怒られてしまった。賓客の食事や手土産を用意するのは当たり前だからって。ごめんなさい。 家の前まで来て憑依を解く。緊張した面持ちのティムの手を取り中に入る。 「ただいま。」 「お邪魔します。父君、はじめまして。ドラゴン族王子のティムと申します。こっちはオレの契約精霊でテュポンのノンです。コウとリンも今日はよろしく頼む。」 父さん、コウ兄、リン兄と、それぞれの契約精霊が揃っていた。 「お帰りエナ。いらっしゃいませティム様。ほら、アキさんもコウもあいさつ!」 「あっ、あぁ。ティム様よくいらっしゃいました。」 「・・・・・・エナの父のアキだ。」 「この度はこの様な機会を与えてくださってありがとうございます。早速ですが・・エナさんをオレにください!!」 「・・・嫌。」 「父さんっ?!いい加減にしないと僕も怒るよ?まぁ、いいけど。父さんが許可してくれなくてもティムについて最南の島に行くから。」 「エナっ?!!最南の島へ本気で行く気か??!」 「しばらくは何とかしてこっちと行き来する方法をティムと考えてたんだけど、父さんがそんな態度ならもう一年間あっちに行きっぱなしでもいいかもね。」 「ほらほら、エナもアキさんも落ち着いて。」 リン兄が仲裁に入る。それでも父さんは僕の顔を見ない。何なの?もうっ?! 「リンに聞きたい事があるんだがいいか?」 ティムの言葉にリン兄がうなずく。 「ワープポイントはどういう原理で成り立っているんだ?むちゃくちゃ遠い最南の島と魔族の国を繋ぐ事は可能か?」 「・・・なるほど?ワープポイントを作ればエナも行き来出来ますもんね。まず結論から言うと可能です。詳細は魔王様の許可がないと話せませんが。 言える範囲で説明すると、あれには莫大な魔力を注がなくてはなりません。瞬間移動が出来る魔力が必要なんです。 この国のワープポイントがすべて魔王城に繋がっているのも、定期的に魔力を注いでくださる魔王様の力が必要だからです。前は前魔王様と魔王様がやっておられました。気が向けばカグヤ様も。 今は次代の魔王候補の二人がその仕事をしています。 もし最南の島と魔王城をワープポイントで繋ぐなら、尋常ではない魔力が必要になるかと思います。」 「ほう。それはワープポイントのどちらかに魔力を注げばいいんだな?なら、もし設置する事が出来たなら、最南の島でオレたち王族が大量の魔力を注ぐから問題はない。」 「なら、魔王様に交渉してください。許可がおりれば僕が設置出来ますよ。」 「それはありがたいな。何としてでも魔王様に許可して頂くつもりだからよろしく頼むよ。 父君、ワープポイントが設置出来ればエナが診療所を続け、実家に帰る事が可能だ。何とか最南の島に連れて行く事を許して頂けないだろうか?」 「・・・なら魔王様の許可が出たら考えてやろう・・・魔王様がそう簡単に許可するとは思えんがな。」 「あぁ、今日の所はそれでいいです。 コウはどうだ?許してくれるか?」 「・・・ティム様がそこまで考えてくれているのなら、オレは文句はないです。 エナ?お前は全て納得済みなんだな?不安に思う事は全部話し合ったか?」 コウ兄が心配してくれてるのがすごく分かって照れくさいな。 「コウ兄ありがとう。大丈夫だよ。ちゃんと話し合ったから。」 「ならいい。幸せになれよ?」 「・・・コウ、まだ早い。魔王様の許可が出てから再度話し合いだ。」 ・・・父さんがウザい。

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