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エナの実家〜魔王城 ティム
あの後、オレが持って行った酒で父君が酔ってしまいかなり絡まれた。だが、酔った父君はなかなかにいい男、いや漢だった。非常に男気があり、面倒見のいいアニキタイプ。エナの母君を亡くしてからは仕事一筋で、騎士団でもみんなから慕われているようだ。
エナを大事に思っているのがすごくよく分かった。それをオレがかっさらうんだからあんな態度になっても仕方がない、と納得する。
コウも父君に似ていて純粋で可愛い。リンの事が好きで好きで堪らないのを隠そうともしない所もかなりの好印象だ。
そしてリンの有能さはすばらしい。エナが頼るのも分かる。リンがいなかったらエナの性格も違っていたかもしれない。父君とコウはちょっと脳筋気味だから、エナにもっと負担がかかっただろう。リンの存在に感謝だな。
さて、オレは今から魔王様に謁見する。最南の島側はワープポイントの設置に乗り気だ。魔力の補充も王族全員ですると言っている。叔父、叔母、従兄弟たちもいるのでかなりの魔力が必要でも何とかなるだろう。
オレは、何としてでもワープポイントを最南の島に設置してやる!そう意気込んで謁見に臨んだ。
謁見の間では、魔王様、宰相的存在のシグ様(魔族の国には宰相という役職はないが、もうシグ様の為に作れば良いと思う)、次代魔王候補のショウとルイが居た。
ショウはカグラの双子の兄で、ルイはリンの弟。魔族に番の概念はないがこの二人は確実に番だ。生まれてすぐにお互いを運命の相手だと認識したらしい。二人とも成人したての十五歳。
魔王様がオレに声をかけてくださった。
「で?何を望んでいる?」
相変わらず単刀直入なお方だ。だが、こちらとしては話が早くて助かる。腹の探り合いなど時間の無駄だ。オレも率直に言う。
「ワープポイントを最南の島に繋がせて頂きたい。」
「ほう?ティムは契約精霊持ちのドラゴンが、この魔王城に攻めて来る可能性があるルートを作る気か?」
「いえ、ドラゴンは通れない設定にして頂いても構いません。魔族のみ行き来出来れば充分です。まぁ、何年か経って今より信頼関係が深まれば、ドラゴンも通れるようにして頂けるとありがたいですが。」
「魔族の制限はなしか?誰でも最南の島に行って良いと?」
「ワープポイントがこの魔王城に繋がっているのであれば問題ありません。この城に入れない魔族が来る事はないでしょう?ワープポイントがある部屋には使用人も入れないようですし。
逆に魔王様方なら大歓迎致しますよ。
あぁ、もちろん魔力の補充はドラゴン族でさせて頂きます。」
「ふむ。一度ワープポイントで訪れておけば次からは瞬間移動でも行けるしな。魔力の補充もドラゴン族持ちなら悪い話ではない。ただ、距離がありすぎて設置しても機能するかは分からんぞ。シグ、どう思う?」
黙って話を聞いていたシグ様が少し考えてから言う。
「・・・そうですねぇ。技術を教えるのではなく、ただワープポイントを設置してこちらと繋ぐだけでしたら特に問題点は見当たりませんね。魔力の補充はティム様以外の方もして頂けるのでしょうか?」
「あぁ。王族全員でする予定です。」
「なら大丈夫でしょう。魔王城よりもかなり多くの魔力が必要となるでしょうが、その問題さえクリア出来れば設置は可能かと。きちんと機能もすると思われます。
で、ティム様。あなたはエナを最南の島に連れて行くのが目的で、その為に労力を惜しまないのは分かります。ですが、他の王族の方々のメリットは?特定の魔族だけを通すワープポイントなんて大して旨味もないでしょう?」
「まぁ、最初はそうですね。最南の島は魔族の国や人族の国との国交を願っています。でも遠過ぎるんです。瞬間移動出来るのはほぼ王族だけですし。
ワープポイントで魔王様や上位魔族が来てくださればそこから可能性が広がります。
アイテムボックスやマジックバックがあれば輸出入も楽に出来るでしょう。
そして信用を勝ち取れば、いずれドラゴンもワープポイントを使ってこちらに来れるかもしれない。幸いドラゴン族の寿命は長いですからね。しばらくの間は魔族しか通れなくても、例えば百年後にでもドラゴン族に許可が下りれば充分なんです。メリットだらけですよ。」
「なるほど。理解いたしました。魔王様、ティム様が最初に出された条件でワープポイントを設置しても問題はないかと思われます。リンを最南の島へ派遣し、設置する方向でいかがでしょうか?」
「ふむ。リンもエナが暮らす場所を見たいだろうしな。それならアキもコウも納得するだろう。よし、ティムの願いを許可する。」
「ありがとうございます!!」
「ショウとルイは何か意見があるか?」
「いえ、何もありません。」
と、ショウ。そしてルイもオレの目を見て言った。
「意見ではありませんが・・・ティム様、エナちゃんは僕にとっても本当の兄のような存在です。どうか幸せにしてあげてください。」
「もちろんだ。オレの命に変えてもエナを幸せにする。」
そうルイに約束した。
はぁ。やっと一息つけるな。オレは約束通り、最南の島へワープポイントを設置する許可を取り付けたんだ。早くエナと父君に伝えよう。これで堂々とエナを最南の島へ連れて行ける。
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