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5.好きになるってどういうこと?

 ディーバに恋したい!と言い切って一週間。別に態度が変わるわけでもなかった。まぁ急に意識されても困るのは俺なんだけど、そっけなさも変わらないからなんだかなぁっていう気持ちもある。まぁ…ディーバだもんなぁ…。  俺は恋愛について勉強するためにたまにバーに通うようになった。夕方で仕事が終わるからそのあとにやってる店ってことで選んだバーだったけど、そういう店には恋愛相談の人も良く来るのだとバーのママが言っていた。思いつきで行ったのに、いい場所を見つけたものだ。 「こんばんは~!」 「あらいらっしゃい、また来たのね」  俺が来る時間は比較的すいている時間で、ママさんと話すことができるのだ。夜遅くまでいてもいいんだけど、充電しに帰らないといけないしなによりディーバに怒られそう。 「今日はさ、好きになるってどんな感じか聞きに来たんだよ!」  情報として知っていてもわからないことはたくさんある。アンドロイドだから余計にそうだ。プログラム以上のことを理解するのは無理がある。でも、きっと不可能じゃない。 「そうねぇ…あたしらには普通にある感情だけど、人間にもない人だっているし、個人差はあるのよ」 「そうなのか!俺皆にあるもんだと思ってたぜ!」 「それに複雑よ~、エラーになるんじゃない?」 「だ、だいじょうぶだし。俺最新機なんだから」  飲み物の代わりにオイルを渡してきた。オイルは飲むものではないからジョークだとは思う。何も置いていないのも確かにおかしいとは思うけれどオイルは俺も飲めないよ。 「それで?好きになりたいの?」 「う~ん好きにはなれるんだよ。でも恋愛とは違うだろうし」 好意を持てない訳ではない。でも恋愛という感じではないと思うのだ。検索をした範囲での推測にはなるけれど。 「好きになるとね、その人しか見えなくなるのよ。盲目っていうのかしら」 「それって不便じゃない?簡単に転びそうだよ」 「ふふ、そうかもね。不便よ。ほかの人なーんにも見えてないんだもの」  意図が理解できずにきょとんとしているとママさんは笑った。 「ほらね?わからないでしょう?」  その言葉にムッとして今日は帰ることにした。 「いつか絶対わかるようになる!絶対!」 「ええ、待ってるわ。あなたの恋バナ楽しみにしてる」  新型だもん。できるさ。いつか恋して自慢してやるんだ! 「あ~恋したい…」  ぽつりとつぶやいた。そうするようにはできていないのに。そう思いながら最新のニュースを受信して帰ろうとしたときポンと来た通知に気づいて足を止めた。 「”恋愛特化パッチ”…?」  その文字は今の俺が必要としているものそのものだった。記事をざっと読んだ感じだと非公式パッチみたいだ。非公式である以上有能なものであっても不具合を起こす危険性もあって、マスターの同意なしでは入れられないだろう。でも俺のマスターは滅多に帰ってこないのだ。 「勝手にやったら…怒られるかな…」  自らの興味だけ危険な道に行くのは良くない、とわかってはいるが…。 「…………。帰ろう」  その記事を読んだせいで今後の人生が変わってしまったのは、言うまでもなかった。

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