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第17話

文維(ぶんい)おにいちゃま、どうかしたの?バナナミルク飲んだら元気になりましゅよ」  これほど小さいのに、煜瑾(いくきん)は優しく他人を思いやる気持ちを持っていた。それが、余計に文維を悲しくさせる。 「ありがとう、煜瑾。一緒にいただきましょうね」 「はい」  2人は見つめ合いながら、母の作ったバナナミルクを口にした。  無邪気な煜瑾はニコニコと満足そうだ。  その笑顔に癒しを感じながらも、文維は少し悲しそうな笑いを浮かべて、聞き分けの良い幼い子にこの後の予定を告げた。 「この後、(とう)家に夕食を食べに行きましょう」 「唐家?」  キョトンとした煜瑾は澄んだ眼差しで文維を見つめ、それから自分の隣にいる恭安楽(きょう・あんらく)に、答えを求めるように見上げる。 「煜瑾ちゃんのおうちに帰るのですよ。煜瓔(いくえい)お兄さまがお待ちのおうちですよ」 「おかあしゃまも?」 「え?」  間髪入れずに煜瑾がした質問に、包夫人も驚いて言葉が出ない。 「おかあしゃまも、ご一緒に行くのでしょう?」 「煜瑾ちゃん…」  何の疑いもなく、この小さく純真な子供は、包夫人を本当に自分の母親だと思っているようだった。その大好きな、大切な母から引き離されるのかと、急に不安になる。 「煜瓔お兄ちゃまのおうちに、おかあしゃまも、煜瑾とご一緒に帰るのでしょう?」  そう言った煜瑾の目には、もう涙がいっぱいに溢れている。 「煜瑾。お母さまは、今夜は一緒には行かない…」 「イヤっ!」  文維の言葉を遮って、煜瑾は拒絶し、大粒の涙でその白くまろやかな頬を濡らしながら、包夫人に泣き縋った。

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