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第19話

「そうね、煜瑾(いくきん)ちゃん。お母さまも一緒に行きますよ」 「ほんとう?本当でしゅか?」  泣きすぎて赤くなった目で、煜瑾は思い詰めたような、不安が拭いきれない目でお母さまを見た。 「お母さまは、煜瑾ちゃんに嘘はつきませんよ」 「おかあしゃま~」  しっかりと抱き合う2人に、文維(ぶんい)は苦い顔をしながらも、強い家族の絆を感じていた。 「いいですか、煜瑾ちゃん。お顔を洗って、ジュースを少し飲んだら、お母さまのお膝に座って、文維お兄さまのお車でドライブですよ」 「ドライブ?」  煜瑾の表情がパッと明るくなり、文維を振り返った。  それに応えるように文維も頷く。 「そうですよ。お母さまも一緒に、みんなで車に乗って、唐家へ行きましょう」 「は~い」  煜瑾は大喜びで包夫人の手に引かれ、涙まみれの顔を洗うためにバスルームに向かった。  ジュースと言いながら、恭安楽(きょう・あんらく)が冷凍庫に煜瑾が大好きなイチゴのアイスクリームを見つけ、リンゴジュースを少しと、アイスクリームを数(さじ)食べて、煜瑾のご機嫌はすっかり良くなった。  今度は文維の車でお出掛けだと大はしゃぎだった。 「おかあしゃま~、早く~はやく~」  煜瑾は包夫人の手を引いて、迷うことなく文維の車のリアシートに向かった。  そんな些細なことが、文維の胸を痛める。煜瑾が文維の車に乗る時は、必ず助手席に乗る。少しでも文維の傍に居たいという、健気な煜瑾の思いが込められていた。  そんな煜瑾が、当然のように後部座席に乗り込み、嬉しそうに包夫人の膝に座った。 「うれしいでしゅ~。文維おにいちゃまのお車で~、おかあしゃまと一緒に~、煜瓔お兄ちゃまとお食事~」  まるで歌うように、煜瑾は声を上げる。そんなご機嫌のよさに、恭安楽も楽しそうで、文維は複雑だった。

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