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第21話

煜瑾(いくきん)坊ちゃま、お兄さまがお帰りですよ」 「煜瓔(いくえい)お兄ちゃま~」  (ぼう)執事の声に、煜瑾はパッと顔を輝かせ、慌てて階段を降りて来た。 「あ、煜瑾ちゃん、気を付けて!」 「おかあしゃま~」  階段の下で待ち構えていたお母さまの胸に飛び込み、煜瑾は幸せそうに笑っていた。  ちょうどそこへ、唐煜瓔が帰宅する。 「おや、包夫人。こんばんは」  いつも通りに端然として、唐煜瓔は恭安楽(きょう・あんらく)に挨拶をし、小さな煜瑾に目を向けた。 「煜瑾、ただいま」 「お兄ちゃま、お帰りなしゃ~い」  幼児化した煜瑾を、当然のように受け入れ、煜瓔は奇異な眼差しさえ浮かべない。 「?」  この唐家の人々の状況が、文維(ぶんい)親子には理解できなかった。 「さあ、包夫人、文維先生、煜瑾が待ち切れないようだ、夕食にしましょう」  何事も無いように、唐煜瓔はカワイイ煜瑾を抱き上げ、食堂へと先導した。 「あのね、煜瓔お兄ちゃま。今日のお昼は、おかあしゃまが煜瑾にオムライスを作ってくだしゃったの」 「それは良かったね。さぞ美味しかっただろう?」 「とっても~」  楽しそうに会話をする美しい兄弟を、包親子は呆然として見ていた。 「どうかなさいましたか、包夫人?」  どう答えて良いものか、恭安楽は困惑して聡明な息子を振り返った。 「あの…、煜瑾について…何も?」  母の視線を受け、しどろもどろな口調で、文維はついに茅執事に聞いた。 「と、申しますと?」  茅執事は、煜瑾の変化を少しも不思議に思っていない様子だった。  そんな目の前の現実を受け入れられないせいで、文維はハッキリと問い質せずにいた。

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