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第7話

今日もきっと俺の自主練には潔は来ないだろう、そう思いながらマットを広げてヨガを始めた。 ヨガを始めてクールダウンしているときが、俺にとっての落ち着く時間だった。 だがその時間は目障り以外の何者でもない奴の声によって中断させられた。 「あのさ、凛」 寄りにもよってまた潔が声をかけてきた。 「なんだ」 「昨日のシャワールームのことなんだけど」 俺は気にせずにヨガを続けた。 「凛は……俺が好きなのか?」 「俺はお前が嫌いだ」 答えは潔だって分かっていたことだろう。 「ですよねー」 苦笑いを浮かべる奴の腑抜け顔は、練習中試合中以外でよく見かける。 正しく自分は人畜無害を装うかのような表情は俺が一番嫌いな顔の一つだ。 「嫌いだと分かってる相手にお前は尻尾振って付いてくるのも反吐が出るほどムカつく」 「今日はやけに喋るな凛」 「……」 「俺も隣で付き合っていいか?」 「勝手にしろ」 一体潔は何を聞きたいのかは検討がついていたが、本人が言うまで俺は無視をしていた。 奴は俺の斜め向かいにマットを広げて俺の真似を始めた。 関節が硬いのだろう、見ていて滑稽だったが俺はそれすらも無視をした。 「なぁ凛は、何で俺にあんなことしたんだ?」 やっと本題に入ってきた潔は真剣な面持ちだった。 「ムカついたから噛み付いた」 俺がそう答えたら潔は顔を歪ませた。 「噛みつく場所がおかしいって!!……もっと試合で喰って見せるとか、他にも方法はあるだろ」 キャンキャン鳴き始めた動物は俺が最も嫌いな行動だった。 相手がコイツだったから余計に俺の中が苛ついた。 俺は立ち上がり潔を見下ろすとそのまま奴の頭を床に抑えつけた。 「痛ってー。いきなり何すんだ」 「他の噛みつき方がいいんだろ」 崩れた潔のボディスーツのファスナーを下げて、露出した肩に俺は噛み付いた。 「ちょっ……ちょっと、何してんだよっ……!!凛」 「五月蝿い、……黙ってろ」 俺の中の潔世一の存在がムカつく。 俺の中の潔世一の存在に苛つく。 そして俺の中で潔世一の存在が大きくなっているのが目障りだ。 この歪な感情はなんなのか、分からないまま本能のまま俺は潔の身体を暴き、無我夢中で犯した。

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