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ジャック×マーカス 1

 「伝説の最強ドラゴンは心優しき白猫を溺愛す」本編では登場しなかった、「綺麗なお姉さんをお持ち帰りするはずが綺麗なお兄さんにお持ち帰りされてしまった俺の話」の主人公、マーカスの異世界編でのお話です。 ーーーーーーーー    俺の名前はマーカス。黒猫のトトを契約精霊に持つ上位魔族だ。 五年前までの俺は平穏な人生を送っていた。 幸い魔王様からも信頼されており、国の財政を管理する仕事を任されている。 また、恋愛面でもそれなりにモテていた俺は女性にも不自由していなかった。なぜか長くは続かなかったが、それでもいつかは運命の出会いがあると信じて毎日を送っていた。 そう、俺は魔族の国で平和に暮らしていたんだ。 五年前までは。 そして五年前のある日、運命の出会いがあった。 ただその相手は女性ではなく、男性だったけれども・・・  魔族とドラゴン族が和解し、国交が開始され、ドラゴン族から留学生が来るようになった。その留学生の中にドラゴン王族のジャックがいた。 魔王城へあいさつに来ていたジャックに、出会った瞬間捕獲されたんだよ俺。 うん、あれは捕獲だ。文字通り獲物として捕らえられた感じ。 「あぁ、見~つけた!君がオレの番だ。」 その後、お姫様抱っこで魔王城に用意されていたジャックの客室に拉致された。 相手はドラゴンだからね。黒猫の俺が勝てるはずもない。 トトは?って焦って俺の相棒の精霊を見ると、ジャックの契約精霊、ウロボロスのクルーの背中に乗っていた。何かふにゃふにゃになって・・・ いつの間にっ?! あれって多分、精神的に繋がってるよねっ??! なんて、トトの事を心配している場合じゃなかった。俺はジャックの客室であんあん言わされ、体から堕とされてしまったんだ・・・俺、女の子とヤルのが好きだったはずなのに・・・ だが、ジャックは俺の事を番だと言って溺愛して来るし、俺もなんだかんだでジャックを愛してしまった。まぁ、多分最初から俺も一目惚れしてたんだよ。じゃなきゃいくらなんでも大人しくヤラれない。本当に嫌なら死ぬ気で抵抗する。 俺が男を愛するなんて青天の霹靂だよっ!! しかもドラゴン王族が相手ってっ?!  それからはガッツリ、ジャックに捕われ、愛し愛される日々を送っている。 早々にジャックのご家族にもあいさつをし、信じられない事にめちゃくちゃ歓迎された。 王族なのにみんなフレンドリーで、いいドラゴンたちなんだ。 ワープポイントがあるから魔族は最南の島に行き放題。ドラゴン族はまだ使用を許可されていないけれど(ワープポイントは魔族の技術だからまだ完全な信用がないドラゴン族の使用は不可)、王族は一度訪れた場所には瞬間移動が出来るから、ジャックにも問題なしだ。  そんなこんなで何度目かの最南の島訪問。今日は王宮のジャックの部屋ではなく、ティムとエナちゃんが経営しているホテルに泊まるとの事。 ティムもジャックの前に魔族の国に留学していて知っているし、エナちゃんとも旧知の仲だ。だからすごく楽しみにしてたんだけど・・・ホテルの隣にある別館に案内されてびっくりした。 何この部屋っ??!!! まず目に飛び込んで来たのは大きな木。何でホテルの部屋に木があるんだ? そして部屋も広いが天井がむちゃくちゃ高い。そりゃこの木を入れようとしたらこの天井の高さになるか。まぁ、基本ドラゴンの家はバカでかい平屋だから、これくらいの高さは普通なんだけど、このホテルは魔族と人族用のはずだろ??これはドラゴンサイズの部屋だ。 その木の上の方にロフトのようなスペースが組み込まれ、布団が敷かれている。 もちろん床にも普通のベッド(布団とベッドは魔族サイズ)があるが、絶対木の上で寝てみたいよなっ?! なんて言うかうずうずする。 「この部屋はリンとコウが考案したんだ。酔っ払ったリンがコウに甘えて、完全憑依して飛びながら精神的に繋がりたいって言ったんだって。で、あいつらはウンピョウとユキヒョウだろ?本能的に木の上が好きだから、精神的に繋がった後そこでヤレる場所があれば・・・って、コウがエナちゃんとティムにポロっと言ったらしいんだよ。 それをティムが面白がってこの部屋を作ったってわけ。土地のスペースはいくらでもあるからね。」 「へぇ~すごいな。確かに俺たち魔族は完全憑依すれば猫科動物になるからなぁ。木に登りたくなるのはすげぇ分かる。」 うんうんと頷いている俺にジャックが、言う。 「て、ことで完全憑依して楽しもうか。」 う、うん。これはそうせざるを得ないかな。それまでクルーと木の上辺りを楽しそうに飛び回っていたトトを呼び寄せる。 「トト、完全憑依。」 「ふぁ~い。」 トトが俺の胸元に飛び込んで来てぶつかる間際にその姿が消え、俺の体に吸収される。その瞬間、俺の体内にトトの気配と魔力が駆け巡り、お馴染みの同化が始まる。 体中の血が沸騰するような感覚。 その熱が背中の肩甲骨辺りに集中して行く。それを解放するよう肉を破って生える翼を完全に伸ばしきると、同時に、黒い猫耳と尻尾も生えてくる。 俺はマーカスト。漆黒の翼を持つ黒猫だ。 「いいね。何度見てもマーカストになる瞬間は美しい。」 そこにはクルーと完全憑依をしてジャックルーとなった愛しの番がいた。

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