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第18話:オリジナリティ

「どうする? まだ時間あるけど、タクトのオリジナルやるか? 譜面とかあるなら俺はいけるけど」  タクトにバックハグされていたアキラが言うと、タクトは首を傾いだ。 「譜面?」 ……猛烈に嫌な予感が、俺とアキラを襲った。 「僕、採譜はしない。そもそも楽譜読めない。音源は気に入ったやつしか残さない。あとは全部ここ」  と言ってタクトが指差したのは、案の定自らの頭だった。 「じゃあタクト、おまえのお気に入りでなるべく分かり易いやつを、軽く弾いて教えてくれ。メロは結斗ならラララで行けるし、俺も基本的なリズムだけ聞けばある程度合わせられる」 「んー、じゃあ……」  ぽや〜んとした幼稚園児だったタクトは少し思案し、腰を落とした次の瞬間、物凄いスピードでギターカッティングを始めた。  テンポ相当早い、しかも変拍子、つかシンコペとピッキングが変態的、っていうかただの変態、弾きながらふらふらと俺のマイクスタンドまで歩いて来てラララと歌い出したメロディはシンプルだったが、音域は相当広い、高音が鬼……。  1サビを終えたところでタクトは演奏を止めた。 「どう?」 「三連符になるフィルの位置だけ分かり易く弾いてくれ。したら乗っかる」  マ、マジですか、聖なる性獣、もとい、スーパードラマー・アキラさん。 「須賀くんは?」 「メロは覚えた。ファルセットをチェストボイスに変えたりして良ければヴォーカルはいけると思う。ベースラインはスラップの位置だけ合図もらえれば」 ——と、言ったものの、ど、どうなる?

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