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第26話:バンド名決定
「キツネさんがいい」
水沢タクトはそう言ってまたメロンソーダのくるくるしたストローを口に含んだ。先日のファミレスではなく、キャンパスから近い純喫茶だったが、タクトはコーヒーや紅茶に微塵も興味を示さず、ただ「メロンソーダが飲めるか否か」という基準で入る店を決めるらしい。
「キツネ、さん……?」
「なんでまた……?」
大真面目な幼児園児(年中さくら組)に聞くと、
「これ!」
と言ってタクトは両手をキツネの形にしてみせた。
「これ、かっこいい」
…………。
「キツネって英語でなんだっけ?」
「FOXだけど……」
「じゃあ『REAL』と『FOX』と武器系の——」
俺とアキラが半ば引き気味にぼそぼそと相談していると、
「REAL GUN FOX」
と、タクトがあっさりと言った。
「りある・がん・ふぉっくす……」
俺とアキラは思わず復唱する。
「意味的には筋は通らないけど、バンド名なんてそんなもんでしょ。それにGUNを真ん中に入れるのは縁起がいいかもね、ジミヘン然り、ミッシェル然り」
タクトが言いながらまたメロンソーダをすする。
「お、俺は良いと思う!」
思わず叫んでいた。
「だって、俺ら三人の言葉だし、まあ俺はGUNを言えなかったけど、タクトくんが選んでくれたのがしっくり来た! それに、REALとGUNが来るとシリアスになりすぎるけど、FOXが入るとポップでかわいい感じになって、良いバランスだと思う!!」
「ありがとう、須賀くん。あとは三津屋くん次第だけど——」
「俺は希望の『REAL』が入ってて、おまえらが納得してるならあんまりこだわらねえよ。いいじゃん、リアル・ガン・フォックス。略称は『リアガン』とかになってキツネ消えるかもだけど」
アキラが言うとタクトが一昔前の『ガビーン』みたいな顔をしていた。
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