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第34話:決戦前のエンカウント 前編

 俺たちリアル・ガン・フォックスの初ライブが近付いてきていた。  六月二十二日金曜日、ハコは上大の最寄り駅の隣だから、もしかしたらタクトと俺が校内で配布した、アキラの知り合いが作ってくれたフライヤー効果で学校からもお客さんが来てくれるかもしれない。  アー写も撮った。アーティスト写真。  こちらはかなり簡素なもので、タクトの提案で、三人が並んだり同じフレームに入るのではなく、別々に撮った三枚をコラージュにし、バンドのロゴも三人であーだこーだ言いながら決め、中心にそれを添えてそれを俺たち三人が覆うようなデザインになった。  しかし恥ずかしい。アー写、いや、バンドが上手くいけばそりゃいつかは撮るんだけどさ、まさかこんな超高速展開で進むだなんて予想だにしてなかったから、大学の各所にタクトが無断で貼ったフライヤーを目にした時、自分の顔がそこにあると、もうなんか羞恥プレイだ。  決戦の初ライブまで一週間を切った頃、俺はアキラから鍵を預かり、営業行為にいそしむアキラより先に部屋に帰ることになっていた。  六階の角部屋までベースとギグバッグを担いでいって、勝手知ったる我が家ですと言わんばかりにすんなり鍵を開け、荷物を入れて鍵を閉めた。    そこで俺は『おや?』と思った。見慣れない靴があるのだ。男性用の、かなり年期の入ったエンジニアブーツが。 「アキラ? 帰ってるの?」    と言いつつ、俺は何か武器になるものが無いかと玄関から廊下を見回し、アキラがたまにタバコを吸う時に使う重い灰皿を持ってリビングの扉を開けた。

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