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第49話:その音色
オレがシャワーを済ませて部屋に戻ると、着替えた神谷がMacBookから音楽を流していた。英詞だったが発音の悪さからして日本人だ。
「あ、悪かったな、勝手に音鳴らしてて。良いギターって噂の曲で」
「別に」
オレはクローゼットまで歩き、バスタオルを落として下着と寝間着を手に取ろうとした瞬間、ギターソロが始まった。
——この音色は……
もう一度冷静に、包括的に曲全体に耳を傾けてみる。
ヴォーカルは英語の発音が下手だが発声は悪くない。ベースは時折不安定、かろうじて崩壊していないのはドラムが安定しているからか。
そしてこのギターだ。
ソロが終わるとすぐにリズムギターに引っ込んだが、これはギター一本で録っている曲だとオレには分かった。
「いおい」
ハッと我にかえると、曲が終わっていて、オレは全裸のままだった。
「風邪引くぞ。早くなんか着ろ。それかもっかいするか?」
「結構だ」
「いおい」
「何だ」
「このギタリストとも寝るのか」
「まだ分からん」
「ハッ! 否定はしないんだな!」
「神谷」
俺は神谷の方に向き直り、口を開いた。
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