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第50話:ご褒美

「神谷、オレはおまえが一番オレのことを理解してくれてると思ってる」  オレが下着を身につけながら言うと、神谷はすっと息をのんだ。 「オレがおまえと寝るのはおまえがオレをリセットしてくれるからだ。オレが他の音を取り込んできても、ちゃんとThe Blue Printの谷津いおいに戻れるように、おまえは抱いてくれる。その代わりは他にいない」  顔をパジャマの上着で隠しながら言ってやると、神谷はどうやら感じるものがあったらしい。 「ああ、分かってる」  神谷は鼻の下を指で擦りながら立ち上がり、オレは玄関に向かうその背に続く。 「んっ」  バイクの鍵を持った神谷がオレの両頬を包んでキスし、 「今晩は眠れるといいな。じゃあ、また明日」  と言って去って行くのを微弱な笑みで見送る。    ペットには、時折ご褒美を与えなければならない。  オレは施錠し、寝室に直行して、消灯してからスマホでそのギタリストの楽曲を聴き始めた。  今から二年ほど前の話だ。

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