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日誌1

太陽が傾く放課後 校庭では部活での大きな声が響いていた。 シャーペンのシュッシュって音と消しゴムで擦る音がクラスに響き渡る。 そこにガラッと扉をあけてこちらにスタスタとくる男子生徒がいた。 ドカっと前の席に座った。 僕がいるのは窓側の席、出席番号1番が窓側からスタートしてるのは珍しいかもしれない。 でも僕にとってはそれがありがたかった。 シャッシャッとシャーペンを動かし文字を書く。 前に座った男子生徒は大森くん。 彼の本当の席は後ろのはず、なのに前の席に座ってこちらを向いた。 目が合った。 彼は黒板を見ていた。 「今日当番じゃなくね?」 「あ、うん頼まれて……」 「ふーん」 シーンとした空気がどこか重い 「あ、大森くんはどうしたの?」 「なんか呼び出しくらったとかで友達待ち」 「そうなんだ」 消しゴムで文字を消す。 「大島って字上手いね」 「え? そうかな、ありがとう」 ドキドキと高鳴る鼓動。 僕は大森くんに恋をしている。 きっかけは放課後掃除当番で1人残ってた時に手伝ってくれたこと、そんな小さなことだけど、でも僕に寄り添ってくれた。 それだけで嬉しかった。 ガラッと再び教室のドアが開き 「悪い待たせた」 「おっせーよ! じゃな」 「うん」 少しの笑顔がグッときた。 1人教室に残される。 でも数分前の僕とは違う僕がいた。 日誌を書き終わり、クラス専用のボックスに提出して帰った。 そして次の日 放課後 掃除して日誌を書く。 これの繰り返し。 バイトは1時間だけ繰り下げてもらい、なんとかなってる。 また、大森くんがきた。 「ふぅー」 とため息をつきながら前の席に座る。 「どうしたの?」 と声をかけると 「んー、俺もついに呼び出しくらった」 「呼び出し? なんの?」 少し突っ込んだ質問、彼は答えてくれるか。 「成績……俺的には頑張ってるんだけどさもうちょいって言われるんだよ」 「そうなんだ」 ちらっとこちらに目線を送る大森くんの目が太陽の光が反射してキラキラと輝いていた。 うっ……。 「そういえば大島って家どこら辺なの?」 「えっと僕は正門出て皆とは逆の左かな」 「あーあっちの町の方が、じゃ俺とは逆だな」 ……残念。 「そっか、左に曲がる人ってなかなかいないよね」 「うん」 僕の机の半分くらいが彼の頭で埋まる。 「今日も友達待ち?」 答えは分かってるけど聞いてしまう。 「いや、今日は大島待ち」 ……え? 「僕?」 「うん、まぁでも校門までだけど」 ……嬉しい。 「じゃ、急いで終わらせないと」 「うん」 日誌とカバンを持って教室を出た。 少し背の高い大森くんの隣を歩くのがこんなにも嬉しいなんて思いもしなかった。 常にドキドキしてたけどでも僕に向かって手を振る大森くん、背中とセットで目に焼き付けた。 バイバイ。

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