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秘色の屋敷 六
望にとって、祖父とは、自分を可愛がって、いつも顔を見れば誉めてくれる優しい人であると同時に、さからってはいけない絶対者であった。
望は祖父の膝上に抱え上げらるかたちになっていた。幼い頃よくそうして抱かれたように。祖父の両手が膝裏をくすぐる。
不快なこそばさに望は身をよじるが、逃げることはできない。
不意に、耳もとにねばつく息がかかってきた。
「……望、いけないことを覚えたな」
そう囁く声ですら老醜を感じさせて、望をぞっとさせた。
そして、恥ずかしい秘密を見透かされた羞恥に望はふるえる。
「ここを、自分でこすったな?」
激しい羞恥に顔が熱くなる。望はあわてて首を横に振った。
ひひひひひひ……。
祖父は華族にあるまじき下品な笑い方をした。望は幼いながらも屈辱にふるえ、顔を伏せた。
服にはつかないように苦心したし、屋敷に入るまえに、裏にある井戸で手をあらったので、まず大丈夫と思っていたが、祖父は少年の性の目覚めに気づき、思春期の臭いを嗅ぎ取ったようだ。祖父には、老いさらばえても鋭敏なところがある。
望はすでにほぼ全裸に剝かれていた。
「あっ……、い、いや」
身体の中心をおおう最後の布も強引に剥ぎ取られてしまい、さすがに狼狽をおさえきれず、思わず逃れようとすると、
「こりゃ!」
厳しい叱責とともに、太腿のあたりをはたかれる。
まるで自分の方が悪いことをした心持ちにさせられ、望は涙ぐんだ。
「おお、悪かった、これはじいが悪かった。泣くでない。なに、恥ずかしがることはない。望もそんな歳なのじゃな。……そういうときはな、じいに言え。これからはな、じいが、ここをちゃんと……気持ち良くしてやろう」
言うや、祖父は土気色の指で望の繊細な芽をつまむ。
「ああっ……!」
望は刺激にこらえきれずに、声をあげた。
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