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牡丹の闇 十一

 くくくくくく。勇の痛快そうな笑い声。 「おまえの泣き顔を見れるという、最高の得があるな。ほうら、つべこべ言ってないで、力んでみせろ」  小馬鹿にしたような肉を打つ音が閨に響く。  勇が仁の臀部を平手でたたいたのだ。 「ああっ!」  屈辱にむせび泣きながら、仁がまた太腿に力を入れたのがわかる。  望は股間と心臓が爆発しそうだ。  いつ果てるともしれない淫らな責めが、その後も延々とつづき、夜は更けていく。   おなじ一夜でも、望が過ごしてきた夜と、勇と仁が二人で過ごす夜とは、なんと違うのか。  もはや外の激しい雨音も、この牡丹の閨でくりひろげられている過激な行為を前にすると、気にならなくなっていた。雨が降っていることすら忘れていた。 「はぁっ、ああっ、あっ、だ、駄目だ、勇、あああっ!」 「おう、とうとう遂ったな」   勇の楽しそうな声が聞こえる。  熱にうかされたように全身を燃やしながら、望は仁のような人でも、自分の身体とおなじく、淫らな想いを弾けさせるものなのかと、不思議に思っていた。 「ああ……」  悲しげな仁の啜り泣きの声に、望の胸はしめつけられる。 「よしよし、泣くな」  溜飲を下げて怒りが静まったのか、勇の言葉はやわらかい。 「も、もう、これで許して……」  一度崩壊してしまったせいか、聞こえてくる仁の言葉には弱さと、ほのかに甘えるような響きがある。こんな声を聞いたのは初めてで、望はまた胸狂おしくなる。 「駄目だ」  途端に、勇の口調は厳しくなる。 「これぐらいで許せるか。まだまだだ。そうだ、いいことを思いついたぞ。望を連れてきて、おまえの淫らな姿を見せてやろうか? あいつはおまえに憧れているからな」 「や、やめてくれ!」  望の胸は拒絶と歓喜に引き裂かれた。

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