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日影の若葉 四

 少女のように白く柔かそうに見える下半身だが、中心には、薄い繊毛がある。 「へー。お人形みたいな顔をしているくせに。ちゃんとここは毛がついているんだな」  ややきつめに指で引っ張ってやる。 「あっ、やっ……」  可哀想に、章一は白い頬を真っ赤に染めて、艶のある黒い瞳から涙をこぼす。 「望ちゃん、変だよ。なんで、こんなことするのさ?」  黒曜石のような美しい瞳を恨みに濡らして問う章一は、通俗小説に出てくるお嬢様かお姫様のようだ。  そんな哀れな章一を見ていると、望はやたらと苛々して、いてもたってもいられなくなってきた。  とことん苛めてやりたい、泣かしてやりたい、という悪魔めいた欲望がわきおこってきて、止まらなくなるのだ。 「なぁ、正直に言えよ。ここを、誰かにさわらせたことあるのか?」 「……」  この無言は肯定だ。望はさらにきつく引っ張る。 「あ、いた! や、やめてよぉ」  本当にいじめがいのある奴だと残酷に思いながら、さらに問い詰めると、章一は頬を赤く染めながら、意外な名を告げた。 「藤村? 俺と同級の?」  藤村は望の級友のひとりで、たしかに章一に付け文したことがあると聞いた。そのときはなんとも思っていなかったが、こうして章一の口から聞くと、やたら不快に感じてしまう。 「おまえ、あいつの稚児なのか?」  自分が気づかないうちに、二人が深い関係を結んでいたのかと思うと腹立たしい。  章一は首を横に振った。 「ち、ちがうよ……。でも、……言うとおりにしないと藤村さんが怒るから……。そ、それに、剣道部の人たちに、挨拶の仕方が悪いとからまれていたとき、助けてくれたこともあって……。断れなくて」  その剣道部の人というのは、まちがいなく藤村の手先、子分だ。望は直感した。  藤村自身も剣道部の主要部員であり、学院にも顔も広い。おそらく子分にわざと章一をいじめるような真似をさせて、そこへ自分は助け舟としてあらわれたのだ。安っぽい演出だ。

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