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第29話 処女喪失

 枢流の左手の指先が、沙羅衣のペニスの下にするりと侵入してきた。  反射的に股に力を込めて止めようとした沙羅衣だったが、すでに潤沢に潤ってしまった幹からこぼれ落ちる液体で、ペニスの付け根から下はぬるぬるだった。  それが潤滑油になってしまい、どんなに腿に力を入れても、奴隷の指が突き進んでくるのをまるで止められない。 「あっ!」 「あは」  とうとう、枢流の人差し指と中指が、沙羅衣の奥まったつぼみに触れた。 「ここがね……ほころびてくるんです……ぼくを、受け入れたがってるみたいに……」  先日の浴場以来の、侵入を目的とした指先が、あっさりと沙羅衣の中へ潜り込んでいく。 「くっ……」 「ふふ、無駄ですよ……どんなに力を入れたって、こんなに濡れてしまっていては……」 「ぐっ……! き、きついッ!」  第一関節。  第二関節。  ほっそりとした指でも、二本束ねられていると、それなりに圧迫感がある。 「あは、本当だ。握りしめられてるみたいな力ですね。搾り上げられてる」  沙羅衣は、体内を逆流してくる巧みな指さばきに、完全に意識を持っていかれてしまった。  すると、先ほどの乳首の時のように、ペニスのほうが強く刺激されてしまう。  ぐりゅっ! 「はうッ!」  この、不意打ちで浴びせられる快感は、その都度新鮮なだけに独特の中毒性があった。  沙羅衣の腰は天井へせりあがり、ペニスはなお激しく屹立する。  そして、枢流の指をより迎え入れやすいように、無意識に足が開いていった。 「先輩、そんなに欲しがってくださって……光栄ですね」 「ほ、欲しがっ……? うあっ!」 「あ」  何かを発見したような枢流の声。  何が見つかってしまったのかは、沙羅衣にも分かっていた。  沙羅衣の内部の、前側。後ろの穴と、ペニスの間。  体外に露出していない、男性の、秘められた最大の弱点。 「先輩……見つけましたよ」 「う、あ」 「ほら、分かりますか? この、当たっているところ……」 「ああっ! や、やめろっ!」 「入り口もいいんですけど、やっぱりここですよね……」  こりゅ、こりゅ、こりゅ…… 「んンッ!」  びくんと沙羅衣の腰が跳ねる。  小さく、しゅ、と蜜が噴いた。 「ああ、すごい……先輩、どんどん濡れてくる……こんなに濡らして、どうしてほしいんですか……?」  沙羅衣は、何かを答えようとした。  しかし、その口からは、悲鳴とうめき声しか出すことができない。  こんな風になるとは思わなかった。  自分の手足が思うように動かないことはあっても、拘束されているわけでも何でもないのに、思うように言葉を発することができないとは。 「いいですよ、先輩。処女、もらいますね。ほら……」  ゆっくりと指を引き抜いた枢流のペニスは、完全に欲望の形状に立ち直っていた。  さっきあんなに射精したのと、同じペニスとは思えない。沙羅衣は、その平然と勃起しきった男性の象徴に、いくばくかの恐怖さえ覚えた。  太い、長い。そして、雄々しく固い。  あんなものが体の中に入ってきたら、どうなってしまうのか。 「ま……待て……ッ」 「待つ? 何をです」 「ゆ、指でこんなに……きついんだぞ。そんな、そんなものを入れたら……!」 「処女って、きついものですよ。大丈夫、先輩を傷つけたりしませんから」  枢流が、沙羅衣の足を割り開いた。  指で穿たれたくぼみが、無防備にさらけ出されている。  枢流が、腰を進めた。  先端がくぼみに到着する。 「ああ……く、枢流っ……」 「はい、先輩」  枢流は笑みを浮かべていた。初めての経験に打ちのめされ、おびえている皇帝をいつくしむような、そんな微笑みを。 「や、やさしく……してくれっ……」 「ふふ。善処はします」   とん。 「ひっ……」  ずぐっ……  枢流が、腰を進めていった。  指とは、あらゆる意味で比べ物にならない存在感を持ったものが、沙羅衣の花弁を巻き込みながら侵入していく。 「……………!」  沙羅衣は、「優しくと言っただろ」と言おうとした。  しかし、断続的に息を吸い込むので精いっぱいで、とても意味のある言葉など発せそうにない。  思わず、両手が枢流の両腕をつかんだ。だが、枢流の挿入はよどみなかった。 「ほら……どんどん入っていく……もっと慣らすこともできたんですけどね、お互い、このくらいがいいかなあって」  このくらいがいいって、何がだ。とはもちろん、声にならない。 「これだけ、抵抗が強いと……先輩も、ぼくのこと、忘れられなくなるでしょう……く!」 「んあッ!」  枢流が、ひときわつよく、一段突き込んだ。そこで動きが止まる。  はあはあと息を荒らげながら、沙羅衣は奴隷を見上げた。体の内側が、入れられている部分だけでなく、すべての臓器に枢流に侵入されたようで、圧迫感がすさまじい。 「これで……全部……か?」 「全部?」  枢流が小首をかしげる。 「いやですね、先輩。まだ、半分しか入っていませんよ」  沙羅衣には、にわかにその意味が分からなかった。  ようやく理解できてから、青ざめる。 「は、半分!? これでか!?」 「いきますよ……んッ……」 「う、うああああああっ!」  枢流が侵入を進めた。  沙羅衣がなにか言おうとする。だが、言葉にならない。  あ、あ、とただ小さく息を漏らすだけだった。悲鳴を上げる余裕すらない。  今までにも、理解を超えた快感を体に打ち込まれたことは何度もあった。  しかし、ここまで物理的に体をひっ迫させられたのは初めてだった。  怖い。  でも、やめないでほしい。  徐々に、枢流の体が深く覆いかぶさってくる。  二つの体の密着する面積が増えていく。  やがて、ぐり、と異質な感覚が沙羅衣を襲った。 「ッ!?」 「あ、到着しましたね。先輩の中の、特別な場所……」  ごりゅ、とその場を通過して、ペニスはさらに沙羅衣の中を食らい抜いていく。  いつの間にか沙羅衣は、自分の足で枢流の腰を抱え込んでいた。  こんなに怖いのに。 「いきますよ、あと少し……あ!」  枢流がうめいた時、二人の腰がぶつかった。  正真正銘、枢流のすべてを、沙羅衣が受け入れた瞬間だった。 「ああ……枢流……!」 「分かりますか? ……全部、入りましたよ。先輩……」 「わ、分かるッ……。こんなに、奥まで……」  感覚としては、ほとんど喉元までペニスが入り込んできたかのようだった。 「少し待っててくださいね……今、なじませますから……」 「な、なじませる……?」 「ええ。ぼくの形と、先輩の中の形が、同じになるように……それから動いたほうが、気持ちいいですから……」  ただでさえ、未経験だったショッキングな感覚に耐えるのが精いっぱいの今の沙羅衣にとって、枢流の言葉の意味は理解の外だった。  とにかく、やっとあの長大な欲望の権化による侵略が終わったのだと思うと、安堵しかない。  まだ、始まったところだというのに、もう沙羅衣にはなんの余裕もなかった。 「そろそろ、よさそうですね……んっ」 「あっ?」  枢流が小さく前後に動いた。  先端の鋭く膨らんだ部分が、初体験の過敏な粘膜を硬質にこする。 「先輩……ほら、一度決まった形のところに、角度をつけて動かすと……より感じるでしょう……?」  枢流の動きが、幅を増していく。  ずちゅ、ずちゅっ……

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