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悠side

悠side  「瀬媽夢高校2年」(せぼむ) 「……え?」 「……ばらすなよ……」 まっ……まじか……樹が……瀬媽夢だったなんて!しかも、後輩!?!? 事の発端は少し……数時間前に遡る。 「はぁ……疲れたぁ……ご飯……食べよぉ。拓也ぁ。」 「もー、悠……もっとしっかりして……」 「しっかりってようやくテスト終わって開放されたんだぞ……」 「そうだけど!学級委員長でしょ!しかも、風紀委員の……」 「それ関係ない……」 「もー。」 「ほら、この上だよ」 拓也に案内してもらい、人がいなさそうな屋上まで連れていってもらう。 僕は、3年生だけど、屋上とか行ったことがあまりなくて穴場とかは知らなくてびっくりした。 僕が階段に足をかけて登ろうとしたその時だった。 「ちょ……まって……拓也……誰かいない??」 「え?」 階段を上り、上に上がると、誰かが寝ていた。 「うわ〜先越されたかぁ……」 誰だろう……背中を向けているから顔が見れない…… でも、この後ろ姿どこかで…… 「あの〜?」 「……んん……は?」 「え?」 これが、事の発端。 「え……っと?」 「っち……おい!拓也!!」 「……ごめん。まさかルカがそこに寝てるとは……」 「っち……」 え……え??まさか、 「どゆこと……樹だよね……??同じ学校……え?後輩……え?」 「……はぁ……」 「瀬媽夢高校2年」 「……え?」 「……ばらすなよ。」 まっ……まじか……樹が……瀬媽夢だったなんて!しかも、後輩!?!? ていうか……! 「拓也!知ってたの?」 「……はは。」 ははじゃねぇよ!はは!! 「……っ!あっちいってろ!!拓也!!」 「ええ……俺?」 「ああ!」 「ちぇ……」 僕が強めにいい離すと、拓也はブスっとした顔で階段から降りて教室に戻る。 戻るのを確認してから僕は樹に声をかける。 「え!?どういうこと!?なんで……僕のこと知ってたの?」 「ああ。知ってたよ。」 「なら、なんで!?!?」 「ダリィ。」 「え?」 「言えばお前ダリィだろ。」 だるい!?!?僕が……!? 「……失礼だよ!」 「はぁ?」 「まぁ、俺も知ったの2週間前だ。お前と出会って学校来たら、いたからなぁ……(笑)」 うそ……だろ……気づかなかった…… 「しかし……なんで、Ωがこんなαの多い学校来てんだよ!」 「だって……その2週間前まで……Ωって知らなくて……」 「はぁ、嘘だろ!?じゃ、入学は興味本位か?」 「違う……それは……」 「ん?」 ……それは…… 「話せば長くなるけどね……、僕は、路地裏で瀬媽夢の子が、その……レイプされている所を見ちゃったんだ……それで、αが嫌になって……この学校を正そうとして、風紀委員に入って委員長になった。」 「……そうだったのか……」 「3人位に囲まれていて、抵抗できないΩは、そのままされるがままにされていた。僕が駆けつけた頃にはもう遅くて……その子は妊娠……したよ。」 「え……?」 「その時おろせばいいじゃん。あんなやつらの子供なんて!って僕は言っちゃったんだ。でも……下ろすってことは、人を1人死なせるってことなんだ。それに僕は気づけなかったから……無責任なことを……だから、彼とはもう……それっきり……」 「会ってないのか?」 「ああ。」 こんなに全部、拓也以外話したのは初めてだ。 「そうか……でも、助けてくれて……お前がそばにいてくれて、その子は嬉しかったんじゃないか?」 「え?」 「レイプされて……怖くて、そんな時にそばに誰かがいるって心強くないか?」 「……え……?」 「お前はすごいよ!よくやったとおもう……」 そんなこと初めて言われた。 拓也でも、そんなに……言ってくれなかった……のに…… 「う……うう……」 「泣くなよ……汚ねぇ。」 「うるさい……」 「ちょっとだけこのままで……」 「っち……どーぞ。」 僕は樹に抱きしめてもらったまま眠りにつき、気づいたら終礼の時間だった。 「あっ……樹……ごめん……寝ちゃって……」 「……ん……」 僕が急いで樹に謝ると樹は、何故か僕の胸を指さして照れくさそうにする。 「え!?なに!?」 僕は慌てて自分の胸を見ると…… 「ぎゃー……」 なにこれ……!?はだけてる……し、しかも……なんかキスマークついてる!? もしかして…… 「ちょっと意地悪した……」 樹がつけたのか……じゃなくて!! 「何してんだよ!」 「ちょっと意地悪。」 「は?」 「人の服にヨダレつけて寝るし、オマケに乳首見えてるし……一回やったからってそんな油断して……」 え!?ヨダレ…… 「それはごめん……でも、油断なんて……」 「油断だろ!知らない男の前でそんな……」 「違うよ。」 「あ?」 「知らない男じゃない……!僕らは……その、友達……なんだから!」 そんな他人みたいなこと言わないで…… 僕がこういうのを予想してなかったのか、樹は、少し固まってから、 「……ごめん」 と謝った。 「なんで樹が謝るんだよ?」 「え……だってお前が……友達とか……」 「え、?」 「……俺、友達とか居なくて……高1の頃から拓也の影響でデリヘルとか……やりだしたんだけど……俺の事をよく思ってないやつがクラスのやつにバラしてさ……その噂は言った本人にやめろっていって終わることが出来る規模ではなくなっていたんだ……で、不良扱いされて誰も近づかなくなった。」 え……そんなことが…… 「だから、俺……友達とか初めてで……なんだろ……素直に……嬉しい……」 嬉しいって……樹が!? なんか……新鮮…… 「なんだよ」 「……別に……」 樹も辛いことがあったんだな。 とか、 ずっと俺がそばにいるから。 とか、 言うのは僕には無理だ。 だけど…… 「僕は、こんな事言うのは初めてだし、正直どうしたらいいのか分からない。だけど、これだけは言っておく。 僕は、困っている人が居たら、大丈夫?君は悪くないよって言って助けに行きたい。それで、そばにいたい。もうあの子の時のような過ちは犯さないし、最後まで向き合うつもりだ。」 伝えられるなら……伝えておきたいんだ。 後悔なんてしたくない。 「何が言いてぇの?」 「だから、同情に聞こえるかもだけど……僕は樹の味方だから!!だから……その、いつでも頼って!……いつでも僕のとこ来てくれていいし……だから……」 「ぷっ……わかった、もういいよ。ありがとう」 僕の真剣さがわかったのか、樹は、少し照れくさそうにした後、僕に優しく微笑んだ。 そろそろかな……? 「おーい。悠呼ばれてるぞ。2年の……篠山に……お前なんかしたのか?睨んでるぞ……」 来た…… 「違う!友達!」 「え……あいつが友達って……」 「なんか、意外だよね。悠くんいい子だからかな。」 「かもな……」 はいはーい。聞こえてますよー! そう。あれからというと……樹が僕の元に来てくれるようになったんだ!! なんて言うの、信頼されているようでうれしい! いずれ、他の子とも樹が仲良くなれるようになったらいいなぁ。 「なーににやけてんだよ。悠」 「ふふっやっほ。樹」 「おう……」 「篠山が……微笑んだぞ……」 「悠に??なんか、今日……やべぇこと起きそう……」 「樹……だいぶ誤解されてない?怖い人だと思われてるよ……」 「……ああ。実際そうだしな……」 「そんなことないよ!樹は優しくて、いい子で実は賢くて勉強教えてくれるし!!」 「ぷはっ……ありがとう……笑」 こんなふうに綺麗な笑顔を見せるのも僕の前だけ……か 「……悠は、勉強できなさすぎ」 「え……は??やれば出来るもん。やれば……」 「ならやれよ!笑」 だから……出来ればいいんだけどね……出来れば…… 「てか、後輩なら悠さんって呼べ!悠さんって!」 「はぁ……??今更〜?」 今更って……まぁ知ったのはだいぶ前だけど!! 「しかも、俺は留年してたから実質悠と同い年!」 「は?嘘だろ。」 「ほら、。」 そう言って樹は、僕に生徒手帳を見せる。 見ると…… 「ほんとだ。」 しっかりと17歳と書いていて本当だってわかる。 誕生日は…… 「8月15日」 「ああ。お前は?」 「9月14日……」 「おお。お祝いしねぇとな。」 「お祝い?」 「したことねぇの?」 「あるけど…… 一回目の誕生日は、お腹壊して友達に帰ってもらって……2回目は、友達にドタキャンされて、3回目はー」 「ふっ……運なさすぎ……」 でしょ!でしょ!そうなんだよぉ だから、僕は誕生日はお母さんと用事っていうようにしてるんだ。 バレないように……こっそりと…… 「ふーん、なら、俺が悠の誕生日を最高の一日にしてやるよ!」 「え?」 「今までにないくらい楽しいものにしてやるって言ってんの!」 今までにないくらい……!! 「ありがとう。」 僕は、照れくさそうにそう言った。 「なら、僕も、樹と僕のたった1度の楽しい思い出になるようにする!」 「たった1度ー?」 「ん?」 「1度きりじゃないだろ、」 え……あ、そっか…… でも、僕は来年…… 「僕は……来年でもう瀬媽夢を卒業するんだよ?」 「……」 ああ。樹も黙ってしまった。 弱音を吐いて困らせちゃったかな? 「卒業しても一緒」 「え?」 「卒業しても一緒!!前言ってたように……俺はずっと悠を頼るから……だから……その!!しっかり、責任とれよ!」 「……うん。」 少し照れくさそうに言う樹の姿は可愛くて……可愛くて……この笑顔を姿を守りたいと思った。 僕がΩじゃなくて、αで、樹がΩだったら……僕は守る側になれたのかな? 「お前そろそろ、発情期じゃね?ほら。」 そう言って樹は、僕に発情周期アプリを見せてくる。 これは、僕と樹がシェアしている。例えば、今日はお腹痛かったとかそういう体調面を入力したりとか…… そうすることによって、いつ発情期が来るかとかそういうのを樹と共有しているんだ。 それで、アプリに記載されていた予定日は、明日…… 発情期、前兆に僕が必ず来る頭痛……を感じた。 「……今日うち泊まる?」 「え?樹の……家??」 「ああ。一人暮らしで親いねぇから。ダメか?店だとオールは事前に店長の許可ねぇと出来ねぇから。」 「いやいやダメじゃない。むしろありがたいよ。」 ってことで……僕は今日荷造りをしている。 今回はこないだ助けてくれた樹の家に遊びに行くと親に言っておいた。 もちろん、明日は学校休むというのと一緒に拓也に発情期が来るから樹の家に行ってくるとも言っておいた。 はぁ……緊張するな……。            

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