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第6話

 そこはもうすっかりほどかれて、行き来する三本の指の形がわかるほど敏感になっている。どうしてこんなにも昂っているのか自分でもわからないが、祐介の体はラフィークとつながりたくてたまらないみたいだ。 (やばい、何これ? 俺なんでこんなに、興奮して……?)  初めて出会った相手なのに、まるでもうずっと前から今夜出会うことが決まっていたみたいな気すらするのは、運命だなんて言われたせいなのか。  誰かに求められるなら身を投げ出してしまってもいいと、知らずそんな願いを抱いていたとか……? 「そろそろ、よいだろう」  頃合いと見たのか、ラフィークが後ろから指を引き抜く。  指が抜けた孔は甘く疼いて、もっと大きなものを求めてヒクヒクとはしたなく震える。もはや欲しがる気持ちを隠すこともせず、陶然とラフィークを見つめると、彼が膝をつき、浮き上がった祐介の腰を支えるように、シーツとの間に腿を差し入れてきた。  大きくさらけ出された祐介の秘所に下腹部を寄せ、剛直の切っ先で祐介のあわいをひと撫でして、ラフィークが告げる。 「そなたの中に、入るぞ?」 「ん、んッ……、ぁ、ああっ――――!」  後孔に雄を突き立てられ、ぐぷりとカリ首まで沈められて、上体をのけぞらせて悲鳴を上げた。  見た目どおりの、いやそれ以上の、とてつもない質量。あり得ないくらい硬くて熱い、まるで肉の凶器みたいなラフィークの雄。  こんな巨大なモノを受け入れたのは初めてだ。あまりの圧入感に、全身の毛穴から冷や汗が出た。全部挿れられたら壊されてしまうのではないかと焦りが募る。 「まずは先が入ったな。そのまま、楽にしているといい」 「ん、うっ、はあっ、あ!」  祐介を見下ろしながら、ラフィークが腰を使って少しずつ熱杭を肉の筒に収めていく。  体に楔を打ち込まれるみたいで、恐怖に震えそうになったけれど、悩ましげに眉根を寄せた彼の表情からは、激しく突き上げたい衝動を抑えている様子が見て取れる。  昂りをぶつけて祐介を傷つけないよう、気づかってくれているのだろうか。 「……ああ、素晴らしい。そなたの中は、こんなにも温かいのだな」 「ラ、フィ、ク……」 「こうしているだけでわかる。やはりそなただ。そなたこそが、約束の番なのだ……!」 (……約束の、番?)  それもまた運命を感じさせる言葉だが、なんだか少し厳粛な響きだ。  ラフィークがただ肉欲に耽溺しようとしているのではなく、祐介との交わりを身も心も望み、それが叶った喜びに心を震わせているのが伝わってくる。  そんな彼の姿に、徐々に恐れる気持ちが静まってくるのを感じていると、やがてラフィークの温かい下腹部が、祐介の双丘にぴったりと押し当てられた。  あの巨大な肉棒をすべて収められたのだとわかって、おののきながらも甘美な興奮を覚える。 「動くぞ、祐介」 「……ん、んっ、ぁ、あぁ」  ゆっくりと、ラフィークが祐介の中を行き来し始める。  モノの大きさが大きさだけにいくらか苦しいかと思ったが、ラフィークは祐介の反応を見ながら、抑制のきいた動きで中を擦り上げる。  やはり祐介が苦しくないよう、気づかってくれているようだ。  愛おしげな目をして、ラフィークが言う。 「そなた、もしやこれをするのは久しぶりなのではないか?」 「な、んで、わかった?」 「そなたの中が、そのように告げている。俺を欲しがりながらも戸惑っているようだ。悦びに花開くそのやり方を、今ゆっくりと思い出そうとしている。そんな具合だ」  そんなことがわかるのかと驚いてしまうが、確かにセックスは久しぶりだ。  とてつもないサイズにおののいたのもあり、雄をつながれたらどこにどんなふうに力を入れたり、あるいは抜いたりするのだったか、体がテクニック的なことを忘れているみたいな感じはある。  ラフィークがぐっとのしかかりながら言う。 「俺に身を委ねよ。俺の熱を感じて、己をどこまでも解き放つがよい」 「あ、んっ」  ラフィークがしなやかな腰の動きで祐介を甘く揺さぶりながら、胸の突起に口づけてちゅくちゅくと吸い立ててきたから、背筋にビンビンとしびれが走った。  祐介は乳首がとても感じやすい。吸われただけですぐにきゅっと硬くなって、欲望を主張するみたいにツンと勃ち上がった。  それを飴でも味わうみたいにコロコロと舌で転がされ、軽く歯を立てられると、腹の底がジュっと潤んでくるみたいな感覚があった。 (胸、気持ち、いい)  肉厚で熱を帯びたラフィークの舌は、まるでそれ自体が生き物みたいに繊細な動きで、祐介の乳首をもてあそぶ。口唇が吸いつく感じもねっとりと心地よく、左右の胸を交互に刺激されると、体の芯が火照って、内奥に喜悦の火がともり出した。 「ぁ、あっ」  知らず腰を揺らしたら、肉杭が中のいいところをズクリとかすめ、ビクンと上体が跳ねた。  ちゅぷ、と濡れた音を立てて乳首から口唇を離して、ラフィークが訊いてくる。 「ここが、そなたのよきところか?」 「あっ! ぅうっ、ああ、はぁあっ」  感じる場所を硬い切っ先でゴリゴリと擦り立てられ、そのたびに喉奥から甘い声が洩れる。内腔前壁の中ほどにある、窪みのようなところだ。そこがとても気持ちのいい場所だったと思い出し、ラフィーク自身の頭のところが当たるよう、自ら腰を動かす。  するとラフィークが行き来するたび、泉の水が湧き上がるみたいな鮮烈な快感がほとばしり始めた。 「ふぁ、ああっ、そこ、いいっ」 「そのようだな。こちらは、どうだ?」 「あぅっ! ぁあっ、そ、こもっ、ああっ、あああ」  感じるところを抉るみたいになぞられながら、最奥近くの少しきつくなっているところをズンズンと攻め立てられて、視界がチカチカと明滅した。  最奥近くのその場所も、雄で突かれたらひとたまりもないところだ。抽挿のピッチと深度を上げられ、狙いすましたみたいに肉の楔を打ちつけられて、目が眩むほど感じさせられる。  悦びに濡れた呆けた声で、祐介は叫んだ。 「あっ、ああっ! す、ごいっ、気持ち、いっ、気持ちいいようっ」  思わず我を忘れて身をくねらせ、後ろをきゅうっと絞ってラフィークの幹にしがみつく。  きつさがこたえるのか、ラフィークが小さくうなって、腰を打ちつけるスピードをさらに速めてきたから、応えるように腰を跳ねさせた。  互いのいいところが擦れ合って、動くたび快感の火花が散るみたいだ。  ひたひたと絶頂の兆しがやってきて、腹がぐつぐつと滾ってくる。 「ふ、ぁあっ、ぃ、きそっ、達っちゃい、そうっ」 「かまわぬぞ。大いに弾け飛ぶがいい」 「あっ、ああっ、あああっ」  追い立てるみたいに激しく中をかき回され、こらえる間もなくどっと大きな波が押し寄せてくる。やがて全身が震え出し、頭も視界も真っ白になって――――。 「ぃ、くっ……!」  細い声を洩らし、ラフィークをきゅうきゅうときつく締めつけながら、ビクビクと身を震わせる。  後ろでオーガズムに達したのはどれくらいぶりだろう。  鮮烈な快感に体中の筋肉がわなわなと震える。祐介自身の先端からは、押し出されたみたいにとろとろと白いものが流れ出して、祐介の汗ばんだ腹や胸に滴った。  腰の動きを止めて祐介を愛おしげに眺めながら、ラフィークが言う。 「俺のモノで達する姿もたまらぬな。中もピタピタと吸いついてきて、実に愛らしい」 「ラ、フィ、ク……」  そうしていいと言われたものの、先に達してしまうと、一人でさっさと気持ちよくなってしまったみたいで恥ずかしい。  でも、ラフィークは楽しげな顔つきだ。頂のピークを過ぎて力の抜けかかった祐介の脚を抱え直して、艶麗な声で告げる。 「何度でも、達かせてやるぞ。俺がそなたを番に求めるにふさわしい男かどうか、存分に確かめるがよい……!」 「……んぅっ、待っ、ま、だっ、ぁあ、あああっ」  絶頂の余韻を引きずる体をラフィークに再び突き上げられ始めると、もはや夢なのか現実なのかわからなかった。  ひたすらに凄絶な悦びの淵に、祐介はずぶずぶと沈み込んでいった。

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