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第5話

 半信半疑ながらも同意すると、ラフィークが何か納得したようにうなずき、忍び笑った。 「ふふ、そうか。この俺を試そうとは、そなた大した心臓だな。だが挑まれるのは嫌いではないぞ? そういうことなら今すぐ応えてやるとしよう!」 「……わ、あっ?」  ラフィークがいきなりベッドに乗り上げ、祐介の体をまたいで顔の脇に手をついてきたから、ドキリと心拍が跳ねた。  祐介よりも一回り以上大きな体に、目鼻立ちのはっきりとした男らしい顔。  どうしてか、一瞬とって食われそうな不安を感じたけれど、間近でこちらを見つめるラフィークの目はとても艶めいていてセクシーだ。吸い込まれそうな青い瞳が美しく、服からかすかに香ってくる香を焚きしめたみたいな深い匂いにも、鼻腔をくすぐられる。  一夜の相手、とは言ったが、ラフィークは一度きりの相手にはもったいないくらい魅力的だ。石油王というよりも、それこそアラビアンナイトの王様のほうがしっくりくるだろうか。 (……案外悪くないな、こういうのも)  王様に迫られているなんて、まるで女の子みたいな、ベタな妄想だ。やはりこれは夢で、ある意味自分の願望をストレートに反映しているのかもしれない。  美貌の異邦人に突然求婚され、雄々しくリードされてのしかかられて、美しい瞳と見つめ合っている。それだけでいつになく欲情するのを感じ、自分でも驚いていると、ラフィークが薄い笑みを見せた。 「忍ぶ恋の相手など、この俺がすぐに忘れさせてやる。口づけても、よいか?」  男らしい自信をのぞかせながらも紳士的に訊ねられ、ドキドキしながらうなずく。  ふっくらと柔らかいラフィークの口唇が、祐介のそれに重なってくる。 「ん……、ンっ……」  ちゅく、ちゅく、と吸いつかれ、舌先で口唇の結び目に触れられ、ぴくりと背筋が震える。ラフィークの体温は祐介より少し高いみたいだ。口づけのたび彼の熱が口唇に伝わって、じんわりと温かくなる。  彼の体温をもっと感じたくて、おずおずとその大きな背中に腕を回して抱きつくと、ラフィークがぐっと祐介の体に身を重ね、口唇を舌で押し開いて、口腔をぬるりと舐ってきた。 「……ぁ、んっ……」  とても熱くて肉厚な彼の舌の感触に、頭が溶けそうになる。  ラフィークは、やたらとキスが上手い。上顎を舐められ、舌を絡めて吸いつかれただけで、体の芯がずくんと疼いた。  このところ決まった相手もおらず、一夜の相手を探したりもしていなかったとはいえ、キスされただけでこんなふうになるなんて初めてだ。もしかしたらラフィークは、ものすごく手慣れているのかもしれない。  体のあちこちが潤み始めるのを感じていると、ちゅ、と濡れた音を立ててキスをほどいて、ラフィークが言った。 「……そなた、ずいぶんと敏感だな?」 「そ、そう?」 「口づけただけで、肌が粟立っている。そら、このように」 「あっ、ん……」  先ほど緩められたシャツの中に手を入れられ、肌を撫でられて、小さく声を立てる。  ラフィークの手は大きくふっくらとしていて、指の腹には弾力がある。触れられると気持ちがよくて、知らず腰が揺れてしまう。  汗ばみ始めた祐介の体から、ひらりとはがすみたいシャツを脱がされ、肩や鎖骨、胸骨のあたりにそっと口唇を押しつけられると、腹の底にじわりと熱が集まってくるのが感じられた。ほう、と小さく吐息を洩らして、ラフィークが言う。 「心地よい温かさだな、人肌というものは」 「……?」 「そなたの肌は特になめらかで、柔らかい……。ずっと、思い描いていたとおりだ」 「ん、ぁ! ぁあ、ふ……」  いつの間にかツンと立ち上がっていた乳首を口唇でちゅっと吸われ、舌先で転がすみたいに舐め回されて、甘い声が洩れる。  何百年も待っていた、などという先ほどの話はどうにも信じられないけれど、祐介を慈しみ、ここに本当に存在していることを確かめているみたいな、優しい触れ方は本物だ。とても大事に扱われている感じがして悪くない。  左右の胸の突起に口づけながら、ラフィークがズボンに手をかけてきたから、脱がしやすいように自分で少し腰を上げると、下着ごとするりと足から抜き取られた。  全裸の祐介を眺めて、ラフィークがうっとりと言う。 「美しい……。そなたの生命の火は、輝くばかりだな」 「そ、なこと、初めて、言われた」 「すでに悦びも兆しているようだ。可愛いぞ、祐介」  知らぬ間に勃ち上がっていた祐介の雄蕊に目を落として、ラフィークが告げる。  可愛い、なんて言われたこともなかったから、なんだか急に恥ずかしくなって、頭と頬が熱くなる。思わず局部を手で隠して、祐介は言った。 「俺だけ脱いでるの、恥ずかしいよっ。あんたも、脱いでっ?」 「そなたに恥ずかしいところなど何一つないと思うが……、もちろんいいとも」  ラフィークが言って、民族衣装のような衣服を緩める。  中から現れたのは――――。 「……っ」  広い肩に厚い胸板、長くたくましい四肢。体中がしなやかな筋肉で覆われ、肌はブロンズのように輝いている。  下腹部には雄々しい男の証が、すでに欲望の形に屹立していたのだが……。 (……めちゃくちゃデカくねっ?)  ラフィークのそれは体格に見合った、というより、それ以上の大きさだった。  外国人には規格外のサイズの持ち主がいるというのは知っているが、こちらは標準的な体形の日本人だ。あまり大きいと少々おののいてしまうけれど。 「……濡れた目をしているな。そんなにも、これが欲しいか?」 「っ!」 「素直なのはよいことだ。すぐに与えてやるぞ、祐介」  濡れた目をしていたつもりなんてなかったけれど、しばらくぶりのセックスだから、もしかしたら物欲しそうな顔をしていたのかもしれない。  かすかな羞恥を覚えていたらひょいと脚を割り開かれ、膝裏に手を添えられて、肩のほうに押し上げられた。 「あっ、待っ……」  腰が持ち上がり、下腹部から後孔まで大きくあらわにされて、甘い戦慄が走る。  祐介の狭間に目を落とし、きゅっと締まった窄まりにちゅっと口づけて、ラフィークが告げる。 「可愛らしい孔だ。俺のモノをのみ込めるよう、丁寧にほどいてやろう」 「ぁ、あっ! そ、なっ、いき、なりっ……」  ラフィークがそこを舌でねろねろと舐ってきたから、ビクビクと腰が弾む。  それをされるのは嫌いではないけれど、ほとんど初対面の相手にためらいもなくされたのは初めてだ。ぴちゃぴちゃと水音がするほど激しく舐め立てられ、ほころんだ柔襞を舌先で穿つようにされて、ゾクゾクと背筋が震える。  まるで獰猛な獣に味わわれているみたいな感覚に、思いがけず興奮してしまっていると、ラフィークがちらりとこちらに目を向けてきた。  頬を熱くして見返した祐介と視線を合わせたまま、ラフィークが太く長い指を祐介の雄に添え、ゆるゆると扱いてくる。 「は、ぁっ、ああ、あっ」  祐介の切っ先はすでに透明な蜜をこぼしていて、それを指で掬い取って幹にほどこしながら扱かれると、根元にジュッと血流が集まってくる。  ほどけ始めた後ろに舌を出し入れされ、雄に絡んだ指をリズミカルに動かされたら、もうそれだけで達してしまいそうなほど、気持ちよくなってきてしまった。 「は、ううっ、ラフィ、クっ、はぁ、あ」  考えてみたら、このところ自慰すらもしていなかったからか、体がどんより重かった。  勤め先が倒産したりしてそれどころではなかったせいもあるが、こうして触れられてみると、自分は思いのほか人恋しかったのかもしれないと気づく。そういうときに出会うのがこういう手慣れた男だというのは、やはり夢だとしか思えない。  だが高まってくる射精感は現実だ。もう達(い)きそうだと告げたかったが、腰をさらに浮かされ、後孔に舌をさらに深く挿し入れられて内襞まで舐め回されて、頭がぐずぐずに溶けてしまう。  幹に絡めた指をぎゅっと絞られ、追い立てるように扱き上げられたら、もうこらえる間もなかった。 「あっ、あっ、ぃ、くっ、も、達、ちゃ……!」  欲望が弾けるままに、絶頂に達した瞬間。  祐介自身の切っ先がぱくぱくと動き、中からびゅく、びゅく、と白いものが溢れてくるのが目の前に見えた。腹の底がきゅうきゅうと収縮するたび、胸や腹に白蜜がぱたぱたと降り注ぐ。  ちゅぷり、と濡れた音を立てて後ろから舌を引き抜いて、ラフィークが言う。 「……気をやるさまもよいな。肌が上気して、朝焼けの空のように美しい」 「っ、んん」 「可愛い孔もだいぶほどけてきた。中ほどのあたりはどうかな?」 「ひぅんっ……!」  まだ愉悦の頂で揺れているのに、舌でほどかれ唾液で濡らされた後ろに、ラフィークが指を二本つぷりと沈めてきたので、裏返った声が出た。  祐介の窄まりは柔らかく開かれ、中は思いのほか蕩けているみたいだ。長く硬い指をゆっくりと出し入れされても痛みなどはなく、指でくるりとかき混ぜられ、内襞をまくり上げられても違和感はない。  ラフィークが笑みを見せて言う。 「よい具合だ。俺の指も、するりとのみ込んでいくぞ?」 「は、ぁっ、うう、ふうっ」  二本の指をのみ込んだ後ろにさらにもう一本指を挿れられ、ツイストしながら抜き差しされて、ビクビクと尻が震える。

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