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第1話

今、時刻は6時半頃、外はもう暗くなっている。 ここはとある高校の生徒会室。 北村時生、2年生、生徒会副会長、は、今日は何の厄日だと思いながら、生徒会室の備品として窓際に置かれているソファーに寝そべっていた。 その彼の上にのし掛かり、顎を指で押さえて練習というにはディープ過ぎるキスをくれているのが、同じく2年生、生徒会長の森井邦彦だ。 今日の生徒会役員会議は6時に終わり、みんなが帰ったあと残ったのが2人だった。 「んっ…、ううん」 時生は身をよじると、邦彦の唇にぴったり塞がれていた自分の唇を引き剥がし、大きく息をついた。 「なっ、長っ!窒息するかと思った!」 「そうか?お前、鍛え方が足りないんじゃないか?」 時生の抗議に、唇の端についた唾液を親指で拭いながら邦彦はしれっと答えた。 短く刈り込んだ黒髪と太い眉が精悍なイメージを与える体育会系のハンサムな顔で、飄々と答えられると、うっかり惚れてしまいそうになる。 時生は、口元に親指を当ててジッと自分を見下ろしている邦彦に見惚れそうになって、慌てて視線をそらした。 「ホントに前にしたことないのか?キス」 「うん、そう言ったろ」 「ホントに〜?」 疑ぐり深い時生の言葉に、邦彦は心外だと言わんばかりに片眉を上げた。

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