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第1話 曇の日の例外。

11月7日の立冬が過ぎた今の時期は、もう暦では冬にです。 秋が過ぎて日はかなり落ちるのはだいぶ早くなってきました。 日が落ちるのが早いからでしょうか、最近杉原先輩は私を自宅に早く送ってくれるようになりました。 それは私には少し、いえ……だいぶ淋しい気持ちにさせていました。 私を思ってくれて早く送ってくれているのでしょう、……と思うと心配してくれている気持ちは嬉しいのですが、両想いになったのですから少しでも長く杉原先輩と一緒にいたいと思うのは、私のワガママでしょうか? それに他の三年生は進路について忙しそうなのに、杉原先輩だけはいつも通りです。 (……それは前に小雪さんが言っていた『茶道の分家を継ぐ』からなのでしょうか?) 「なぁに?叶はまた考え事なの」 「え」 私は顔を上げると、立ち止まっていた杉原先輩に軽くトスッとぶつかってしまいました。先輩はあの困ったような笑顔で私を見下ろしていました。 「淋しいって顔に書いてあるよ」 先輩に言い当てられてしまって、私は目を背けました。 「……別に書いてません」 あぁ、私は本当に子供です。心に余裕が全くないんです。 そんな自分が嫌になり、私はいたたまれなくなってしまいました。 「叶は最近早く家に帰されるようになって淋しい?」 ……図星を言われて私はドキリとしました。 こんな時に杉原先輩にも私の作り笑顔が通じたらいいのにと思ってしまいます。そうなら強がっていられたのに、そう思う私にも嫌気がさしました。 「杉原センパイが大好きで、もっと一緒にいたいのに!!愛してるのに、先輩帰っちゃイヤです!って顔?」 「あっあいぃしてる、なんて!!」 そんなこと私思ってるんですかっ?! 「あれ?!違うの?愛してない?センパイはちょー淋しいっ」 先輩は明らかに私をからかってます!!ですが最近そのからかう行為は私を心配してくれて言ってくれていることを知りました。 すると杉原先輩は急に真面目表情になってから、いつもよりトーンが低い声で、  「ごめんね、叶」 「……?」 どうして杉原先輩が私に謝るのか分かりませんでした。 「今日は曇りだから、物足りないイチャイチャの日だね」 『おいで叶』と言われ杉原先輩は私に手を出しています。……男子同士です、他の方から見たらおかしいのでは?と、戸惑っていたら強引に手を握られて、先輩は駆け出しました。 「え?!先輩、どこにいくんですか!!」 私の疑問に杉原先輩は楽しそうに、 「今ならこの時間には居るんだよねっ」 先輩はそれだけ答えて、私を連れて車一台しか通れないくらいの道に入って行きました。

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