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第11話

あのときの私は中学二年で、……その写真に写っていたのは、私の『性器』でした。そのときの『杉原 亮』は覚えてませんが、表情はとても似ていました。 「『情事』は『セックス』という意味よ」 小雪さんは申し訳なさそうな気持ちなのだろうか……それとも失言をしたのを後悔しているのでしょうか。ですが……私は何となく分かっていたことだったのです。 「……ですよね。じゃなきゃあんな慣れたキスとか……手付きとかあり得ないことですから」 私は笑ってみせた。 「叶さん、ごめんなさい。あの子……これだけは教えていると思ってました」 「じゃ笹倉くんもヤっちゃえばいいじゃない?」 「!!っ光さん」 そこにはあのとき、お風呂場に来た人『光さん』がこちらを覗いていました。 乱れた着物を着ていた光さんの首筋には、いくつかの鬱血が見えます。……あれはキスマークですよね。 「小雪さんが僕の気配に気付かないなんて、お気に入りの客なんだね」 「当たり前です。俊さんの『本命』ですから」 「その『本命』に手を出せない俊は可哀想……」 (杉原先輩が、可哀想……?) 「光さん!!いい加減にしてください……」 「はいはーい、この辺にしとくよ。小雪さんは紅葉より怖いからね」 すると光さんは手に持っている物を私の前にいていきました。 「これ盗み聞きのお詫び。おやつに食べな、笹倉クン」 私の前に置かれた物を見ると、赤や黄色や青のセロハンで包まれたラムネ菓子でした。 「一応俊の好きなものなんじゃない?」 ……杉原先輩の好きなもの?本当なのでしょうかと小雪さんを見ると、困ったような笑顔を浮かべていました。 ということは、本当なのでしょう。 「さてさて僕はお風呂だから。それ食べて早く元気になりな」 そういうと、光さんはペタペタと音をわざと立てているみたいな歩き方で去っていきました。 「……光さん、もっと意地悪な方なんだと思ってました」 私はラムネ菓子を手に取り見ていると小雪さんは、私を守るように抱き締めてくれました。 「叶さんは光さんを分かってないわね。見た目が良いだけの最低な男です」 どうしてでしょうか、私は光さんを嫌いになれませんでした。初対面でお風呂は覗かれてしまいましたが。 「ですがラムネ菓子はいいときに出してくれましたね。光さんが乱入してしまいまして、ごめんなさいね叶さん」 「大丈夫です。……私は嬉しいです」 杉原先輩の『好き』なものを一つ知れたことが嬉しくて仕方がありませんでした。私は心から笑ってみいたと思います。

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