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第73話 『リウの話②』
一週間前、ロッドが生まれた村であるサイスに、クオンが突然やってきた。
リウがクオンに会うのは一年ぶりだった。会いに来てくれたことがこの上なくうれしかった。
挨拶もそこそこに、第六王子がこの街にいることを聞いた。とても驚いた。
リウを捜しているから会わせたいと言われたときは、どちらかといえば会いたくなかった。
合わせる顔がなかったからだ。
だが一年前から森の家に来ていて、レイトンに住んでいるとなると、会ってしまうのも時間の問題だと思った。
クオンは黙っていてすまない、と言った。
以前のクオンはサイス村に二カ月に一度、薬草茶を売りに行っていた。だが、リウがロッドと暮らすようになってからは、訪れたことがなかった。
代わりにロッドがクオンの家に必要な物を交換しに行っていた。
リウもクオンに会いたかったが、自分からは会い行くことができなかった。
なぜなら、クオンの気持ちを知っていたのに、ロッドと恋仲になってしまったからだ。
クオンがサイス村に来なくなったのは、リウに会いたくないからだと思っていた。
六年前、クオンと一緒に初めてサイス村に訪れたとき、ロッドはリウに一目惚れした。
彼は情熱的で、会うたびに口説いてきた。その頃はまだ王子を忘れられずにいたので、適当にあしらっていたが、クオンはロッドと仲良くなっていった。
ロッドは森の家にもよく来ていた。クオンのお父さんも賑やかでいいな、青白い顔でうれしそうだった。
リウはたまにロッドに強引に誘われ、二人で出かけることがあった。熱烈に口説かれ続け、三年も経つと、リウもロッドに魅かれ始めた。
しかしあるとき、クオンもロッドのことが好きだということに気がついた。
ロッドはクオンの前でも恥ずかしげもなくリウを口説いていたので、ロッドの気持ちは知っている。そのためか、うまく隠していたが、リウにはわかってしまった。
クオンの勘違いとはいえ、命を助けてくれたこと、お父さんが亡くなったあとも、リウと一緒にいてくれるクオンを裏切ることはできなかった。
だが、好きになってはダメだと思うほど、魅かれてしまった。ロッドは男気があって、頼りになる。
彼を想う気持ちは、ついにロッド本人にも気づかれてしまった。
両想いだとわかっているのに、首を縦に振らないリウに、ロッドは何が理由なのかと問い詰めてきた。
気持ちに応えたいのに、応えられない板挟みで窮したリウは、クオンに恩があるから、自分だけ幸せにはなれない、と言ってしまった。
ところがクオンの気持ちを知らないロッドは、そのことをクオンに相談してしまったのだ。
リウは己の浅はかさを呪った。
ロッドはクオンのことを親友だと思っている。言わないわけがなかった。
そしてクオンは有無を言わさず、ロッドのところに行けとリウを家から追い出した。
真冬の寒い日で玄関に鍵を掛けられ、ロッドのところ以外に行く場所がなかった。
王子がレイトンに来る二カ月前のことだった。
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