1 / 117

第1話

「はい、繋がったかな?じゃあ始めますね……」 小型ハンディカメラの内臓マイクに向かって、秀一は流暢な口調にて語り始める。 「眠れない夜を過ごす皆さん、眠らないで朝を迎える気満々の皆さん、暇持て余しちゃってる?暇すぎて死んじゃう?」 「いつもの時間にいつもの僕が、あなたのそんな時間を満たします」 「夜のお供はいつも、お菓子とコーラと、ホラーチャンネル『真夜中パーティ』!イエーイ!」 声に合わせ懐中電灯を持った片手を勢い良く突き上げる秀一。 辺りはしんと静まり返っており、独り騒がしい配信者の存在はぽつんと浮いている。 「こんにちは、シュウです。今夜の『真夜中パーティ』は最近ネットで噂の廃校から生配信します」 真っ暗な中光るのは、秀一が構えて自身の動画を撮っている小型ハンディカメラのディスプレイのみ。 そこには、今は使われておらず、老朽化が進んだ校舎の前景が映し出されていた。 近年の少子化により小・中学生の数は減少を続けている。 それに対応し、管轄の市区町村が 学校の数を減らすように動くのは当然のことだ。 学校は、税金によって運営されているのだから。 周辺の学校と統合すれば、同時に必要教員の数も減る。 ただ問題として、不要になった校舎をどうするかという問題が起きる。取り壊すにも必要がかかるからだ。 宿泊施設として再利用するなど、上手く校舎を活かしている市区町村もあるわけだが、放置され廃校舎となってしまう場合も少なくはない。 そもそも、訪れたこの学校がどんな理由で廃校舎となったかなど、秀一は知りもしないが。 そして興味があるのは霊が出るか、怪奇現象が出るかですらなかった。 秀一が興味があるのは、視聴者の心を掴む不気味な雰囲気の映像が撮れるか。それだけだ。 「学校の怪談って馬鹿みたいな数あるよね?一周すれば1つぐらい遭遇出来たりしないかな。 下手すると僕が怨霊に襲われてこれが最後の配信になっちゃったり…」 「その時は香典としてスパチャお願いします。なあんてね!それじゃ、校舎に突入しまあす」 おどけた声を出す。配信をしている時の秀一は普段とは異なり、自信に満ち溢れ堂々としている為、演技もバッチリだ。

ともだちにシェアしよう!