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第8話
「…あっ…はっ、はっ、は…っ…あぁ…っ」
-映画館のトイレの個室。
治朗に手でイカされ、言われるままトイレに来たもののそれだけで終わるわけもなく、治朗に押し切られる形で今、治朗の舌に翻弄され、喘いでいる情けない俺。
(………拒む事ができなかった……)
だって、俺のペニスを治朗は躊躇う事なく口に含んだ。
俺は彰のモノを咥えた事はないし、勿論、彰にも咥えさせた事はない。
だから、何の躊躇もせずに俺のモノを咥えた治朗に、反対に俺の方が、吃驚した。
手ではした事があるけど…それも先程の治朗のと比べたらじゃれ合いみたいなものだったと思う。
それほどに…上手い…というのだろうか…手でも口でも、翻弄され、すぐに昇りつめ…イカされてしまう。
「…あ…放して…も…イク…イクから…っ」
治朗の頭を俺の下半身から放そうと力の入らない手でペチペチと頭を叩くが、治朗は俺のペニスを咥えて放さない。
「…も…駄目だ…イク…」
我慢も限界…とうとう治朗の口の中に射精してしまった。
治朗の口の中でイってしまったショックと羞恥ので治朗の顔を見る事が出来ず、横を向いて息を整えている俺の顔をわざわざ覗き込んで治朗は、舌を出しゆっくりと濡れた唇を舐める。
その卑猥さに思わず目を瞑る俺。
「…良かったでしょ…じゃ、次はオレの番だね」
嬉しそうにニンマリと笑う。
(…何の事だ…?)
一瞬言われている言葉の意味が分からなかった。
訝しげな顔をした俺を見て、治朗は呆れたように口を開く。
「…おいおい、まさか自分だけ気持ち良くなってはい、さよならじゃないだろう?」
…そこで始めて、治朗が言わんとしている意味に気が付いた。
ドクンと心臓が、高鳴る。
(俺が…治朗のを…?)
「…口が嫌なら、手でしてくれてもいいよ?…イカせてくれるのなら俺はどちらでも」
そう言いつつ、治朗はズボンの中からペニスを取り出す。
また、ドキンと胸が鳴る
(…手でなら……)
少し躊躇ったが…手なら、彰にもした事があるし、裏切りにはならないだろうと自分に言い聞かせて…何より、さっき治朗に言われた言葉が頭の中、残っている。
『…自分だけ気持ち良くなって…』
その言葉を言い訳にして、治朗のペニスにギクシャクと手で触れた。
「…痛…っ…少し力入れすぎ。もう少し優しくしてくんないと」
「…ご、ごめん」
…緊張していて、手に力が入ってしまったらしい。
治朗の抗議にすぐ手を離したが、再び恐る恐るという感じでペニスに触り直す。
そして-。
少しの間、治朗のペニスを手で扱いていたが、なかなか勃たない。
焦る俺に、治朗の溜め息混じりの声が聞こえてきた。
「…駄目、駄目。そんなんじゃ全然イケない」
呆れたような、その声。
「……ヘタクソだなぁ…しょうがない…手はもういいから、口でしてよ」
「………えっ!?」
驚いて顔を上げた俺を見返して、当然のような顔をした治朗が呆れたように言う。
「…だって、手でイケないんだから、口でするしかしょうがないでしょう?」
…口で…なんて…。
(…そんな事…彰にもした事がないのに…)
「ほら、何しているの、早くして」
俺が躊躇っていると、焦れた治朗が腰を突き出し、ペニスをグイグイと俺の唇に押し付けて急かす。
1回目は手で、2回目は口でイカされたという後ろめたさがあり…少し迷っていた俺は…結局、治朗のペニスを直視しないように目を瞑ると、ノロノロと口を開いた…。
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