21 / 33

第21話

「…樹生…?…いるの…?」 トイレのドアがそっと開き、彰の声がした。 トイレの中が明るくなる。 「…樹生…?…大丈夫!?」 トイレの床、破られた服を着て呆然とした状態でいる俺を見て、彰が驚いたように走り寄ってきた。 そこで俺は自分の格好の酷さに…シャツはボタンが取れ、ズボンは膝まで脱がされ下半身が丸出しの状態に気付き、慌ててトイレの床から立ち上がり、服を整える。 整えるといっても、取れたボタンはどうしようもないけど。 「…樹生…大丈夫?何があったの?」 「…いや、何でもない。大丈夫」 -彰に心配はかけたくない。 でも、それ以上に彰に治朗との事を知られたくない。 きっと、アイツらは治朗に言われて俺を襲ってきたに決まっている。 アイツらの事を話したら、治朗との事もバレるかもしれない。 (……それは駄目だ、絶対に!!) 「…なかなか帰ってこないから、どうしたのかなと思って…本当に大丈夫?」 「本当に大丈夫だから…それより誰か見なかったか?」 「……うん……佐野君と畠山君と田野上君がトイレから出てきて…僕を睨んで行ったけど…」 (…やっぱりアイツらか………) 3人は治朗の金魚のフンだ。 治朗の気を引く為、言われたら何でもするだろう。 -廊下の明かりに照らされて見えた横顔が、田野上だったから、後の2人も佐野と畠山だろうと予想してたが………。 (やっぱり………) きっと、今回、ご褒美を餌に俺を襲うように言ったんだろう。 「……彰………この事、誰にも言わないでくれないか?」 俺の頼みに彰は少し戸惑ったようだ。 「…それは…言わないけ…ちょっと待って。唇、切れているけど…頬も少し赤い気が…もしかして、殴られた?………やっぱり、先生に言った方がよくない?…こんな…………悪戯だとしたら悪質だよ」 (……悪戯なんかじゃない) 先程、3人に襲われた時の事を思い出しす。 殴られた時の、頬の痛みを………。 (アイツらは本気で俺を………) でも、彰には悪戯だと思わせていた方がいいかもしれない。 その方が安心するだろう。 「…いや…いい…自分で解決する…ってか、解決できるから…心配しないで」 「…本当に?」 「ああ……って、そんな、解決っていうほど深刻なモノじゃないから」 彰を安心させる為、笑って言う。 -何でもない事のように。 だが、心の中は治朗に対する怒りでいっぱいだった。 -アイツらは俺が治朗に抱かれた事を知っていた。 治朗が皆に吹聴しまくっているに決まっている。 俺には『知られなければいい』とか言っておきながら人に話すなんて……。 -彰にバレるじゃないか!! その上、俺をアイツらに襲わせるなんてどういうつもりだ!! 治朗のやつ………。 (やっぱりアイツ………絶対、緩さねぇ………っ!!)

ともだちにシェアしよう!