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第21話
「…樹生…?…いるの…?」
トイレのドアがそっと開き、彰の声がした。
トイレの中が明るくなる。
「…樹生…?…大丈夫!?」
トイレの床、破られた服を着て呆然とした状態でいる俺を見て、彰が驚いたように走り寄ってきた。
そこで俺は自分の格好の酷さに…シャツはボタンが取れ、ズボンは膝まで脱がされ下半身が丸出しの状態に気付き、慌ててトイレの床から立ち上がり、服を整える。
整えるといっても、取れたボタンはどうしようもないけど。
「…樹生…大丈夫?何があったの?」
「…いや、何でもない。大丈夫」
-彰に心配はかけたくない。
でも、それ以上に彰に治朗との事を知られたくない。
きっと、アイツらは治朗に言われて俺を襲ってきたに決まっている。
アイツらの事を話したら、治朗との事もバレるかもしれない。
(……それは駄目だ、絶対に!!)
「…なかなか帰ってこないから、どうしたのかなと思って…本当に大丈夫?」
「本当に大丈夫だから…それより誰か見なかったか?」
「……うん……佐野君と畠山君と田野上君がトイレから出てきて…僕を睨んで行ったけど…」
(…やっぱりアイツらか………)
3人は治朗の金魚のフンだ。
治朗の気を引く為、言われたら何でもするだろう。
-廊下の明かりに照らされて見えた横顔が、田野上だったから、後の2人も佐野と畠山だろうと予想してたが………。
きっと、今回、ご褒美を餌に俺を襲うように言ったんだろう。
「……彰………この事、誰にも言わないでくれないか?」
俺の頼みに彰は少し戸惑ったようだ。
「…それは…言わないけ…ちょっと待って。唇、切れているけど…頬も少し赤い気が…もしかして、殴られた?………やっぱり、先生に言った方がよくない?…こんな…………悪戯だとしたら悪質だよ」
(……悪戯なんかじゃない)
先程、3人に襲われた時の事を思い出しす。
殴られた時の、頬の痛みを………。
(アイツらは本気で俺を………)
でも、彰には悪戯だと思わせていた方がいいかもしれない。
その方が安心するだろう。
「…いや…いい…自分で解決する…ってか、解決できるから…心配しないで」
「…本当に?」
「ああ……って、そんな、解決っていうほど深刻なモノじゃないから」
彰を安心させる為、笑って言う。
-何でもない事のように。
だが、心の中は治朗に対する怒りでいっぱいだった。
-アイツらは俺が治朗に抱かれた事を知っていた。
治朗が皆に吹聴しまくっているに決まっている。
俺には『知られなければいい』とか言っておきながら人に話すなんて……。
-彰にバレるじゃないか!!
その上、俺をアイツらに襲わせるなんてどういうつもりだ!!
治朗のやつ………。
(やっぱりアイツ………絶対、緩さねぇ………っ!!)
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