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第20話
-明るい廊下からいきなり明かりが点いていない暗いトイレの中ヘ引きずり込まれた俺は、吃驚して抵抗もできない。
「…声を出すなよ」
耳許で囁かれた声は聞き覚えがある。
…でも、誰だったか思い出せない……。
「お前、治朗の女になったんだってな」
今度は反対の耳許で囁く声。
(…1人じゃない!?)
いきなり襲われて気が付かなかったが、相手は複数いるらしい。
(…ふざけんな!!)
相手が誰かは分からないが、声に聞き覚えがあるという事は、多分、俺と知り合い……のはず。
そうと分かると、急に沸いてくる怒り。
俺は、両手を振りまして暴れる。
「…止めろ…暴れるな…この…っ」
「…そっち持て…大人しくしろって…」
振り回した手が何かに当たる。
「おい…っ…痛…っ!…コイツ……!!」
口を塞いでいる手に噛みついた。
「…痛…っ!…こいつ…噛みやがった………っ!!」
ガツッ!!
(……………あ……………?)
顔が右にぶれる。
目の前を火花が飛ぶ。
頭が一瞬、真っ白に。
少し遅れて痛みが。
左頬が焼けるように熱い。
殴られた…と気付いた直後。
ガツッ!!
今度は右頬に、同じような衝撃。
口の中に鉄の味が広がる。
「…お、おい…止めとけって…顔とか殴ってあいつにバレたら…」
「…でも、こいつが…」
(…あいつ…?)
「…いいから、サッサとヤろうぜ」
「…あ、ああ…そうだな」
シャツを捲られ、胸をサワサワと触られ。
ベルトを外す音がして、ズボンと下着を一緒に膝下まで下ろされる。
羞恥と屈辱に、カッと頭に血が上る。
(…止めろ!!)
俺を取り囲んだ奴等の視線が下半身に集まっているのが暗闇でも感じる。
(止めろ!!)
暴れようとしても…両手、両足は押さえつけられて動けない。
逃げようとして身体をくねらせるも叶わず、また手を噛んでやろうと口を開けた。
(…ひ…っ!!)
だが、口を開けると同時に誰かの手が俺のペニスを力強く掴んだ。
「…あんまり暴れると…ココ、握り潰すぞ。それとも…玉の方がいいか?」
「…2つあるしな、1つくらい使い物にならなくなっても大丈夫だろ」
誰かの手が俺の睾丸をたぷたぷと触る。
俺の顔色は急所を強く握られている恐怖に、潰される恐怖に、血の気がひいて青くなる。
周りからクスクスと笑う声が聞こえる。
「…どうする?大人しくするか?」
その言葉に、僕は即座にコクコクと頷く。
ソコを握りつぶされるよりマシだ。
そう、思ったのに。
「よ~し、良い子だ」
頭を撫でられ、またしても湧き上がってくる怒り。
(…ふざけるな!!…絶対、許さないからな…絶対…探し出してやり返してやる!!)
俺は暗闇の中、目を見開いて男達の顔を見定めようと睨んだ。
たが、廊下から漏れてくる明かりの為、逆光になって分からない。
せめて人数だけでも………と思った。
その時。
ろうかを走ってくる足音が聞こえた。
「………ヤバイ!!こっちへ来るぞ」
それと同時に俺を押さえつけていた手が離れ、慌てて走り去っていく。
「………どうする?」
「バカ!!逃げるんだよ!」
(…アイツら…っ!!)
逃げていくソイツらがトイレのドアを開けた時、その中のひとりの人物が俺の方を振り返った。
その時、廊下からの明かりに照らされ見えた横顔は見覚えのあるもので………。
治朗と一緒に映画に行こうと約束していた仲間のひとり。
ー俺ともけっこう親しくしていた人物だった。
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