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第29話
-開けたドアの内側から俺を見て笑って手を振ったその人物の顔を見て血の気が引いた。
「………治朗!?」
俺は取り落としそうになった荷物を慌てて抱え直し、廊下を走って自分の部屋の前に辿り着く。
「…………どうして………っ!?」
「……何、せっかくサプライズで来たのに嬉しくないの?…ま、いいや、早く入って」
「………入ってって………ここは俺の………」
俺の言葉を最後まで聞く事なく、治朗は俺の手首を掴んで部屋の中に引きずり込む。
「…ちょ……止せって……今日……彰が……来るから……まず……い………」
俺の手からスーパーの袋が滑り、中の荷物が音をたてて床に零れ落ちる。
治朗は俺の言葉を遮るようにキスをしながら、俺の服を剥ぎ取っていく。
「……ほんと……駄目だから……治朗……」
「大丈夫、大丈夫………っていうか…我慢できるの?……ん?」
ベッドの上に倒された時は、俺の服は全て剥ぎ取られて全裸になっていた。
-俺の身体はもうすでに治朗を受け入れる状態になっている。
身体の奥が……治朗のモノが欲しいと………疼いてたまらない。
早く挿れてほしい………。
横目で時計をチラリと見る。
(……まだ、約束の時間まで余裕はある)
彰が来るのは夕方………今はまだ、正午だから……まだ、大丈夫………十分時間はある。
快感に弱い俺の理性はあっという間に欲望に飲み込まれ、俺は治朗の首筋に両手を回す。
「……………いい子だね」
満足そうに治朗が、耳許で囁く。
俺は目を閉じて治朗に身を任せた………。
…………………………………………………………。
………………………………………。
…………………。
「……あ………ああ………いい………っ!!」
治夫のペニスを身体の奥深くに迎え入れ、両手、両足を治夫の身体に絡みつかせ、腰を振る。
「…あ……あ……ああ………あ……あ……あ……っ」
身体の奥深く……感じる場所を突かれる気持ち良さに俺の頭の中は何度もスパークする。
-何も考えられなくなる……………。
「…もっと……そこ……っ…そこ………もっと…強く…っ」
「………分かってる……ここだよね…?」
最奥を突かれ、目の前に火花が散る。
快感に身体が震える。
「……ひぃ……っ!!……そこ…そこ…もっと……っ」
「……どう?もうオレの身体じゃないと満足できないでしょう……?オレにこうやって中を突かれないともう、イケないよね?」
「……ひぃ……っ…ひぅ……っ…」
「……ねぇ、オレと彰、どっちがいい?」
「……ひぃ…っ……いい……いいよ……っ」
「……いいよじゃなくて、オレと彰、どっちがいいかって聞いてんの……答えないと止めちゃうぞ」
その言葉に、俺は慌てて治朗の身体にしがみつき叫ぶ。
快感の為に、俺の目からは涙が溢れて止まらない。
「……嫌だ……っ!…止めないで…突いて……そこ……っ…もっと……突いて……っ!!」
俺の耳許で治朗が面白そうに囁く。
「……じゃ、答えて。オレと彰、どっちがいい?どっちが1番、感じる?」
条件反射のように俺は叫ぶ。
「治朗…治朗がいい…っ…治朗の方が感じる……っだから、止めないで……っ」
俺の言葉に、治朗はおかしそうに笑った。
「……あの樹生がオレの女になるなんて…最高だよ。今度、皆にお披露目しようかな……?……樹生が完全にオレの女になったって……どう?」
もう、俺の耳には治朗の言葉なんて聞こえない。
ただ。
快感を追い求め。
高みに上り詰める。
その事だけ。
「……いい……いい……っ!!」
-その時。
ガタッ。
音がした。
小さな音。
いつもなら気にもならない。
聞こえない。
それが、この時。
何故か大きく聞こえた。
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