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第32話
-部屋のドアが開いた途端、俺は懐に隠してあったナイフを取り出し身体ごと治朗に体当たりをしようとして突っ込んだら、反対に右手首をねじり上げられた。
「………っ!……放せ!!」
「………熱烈歓迎だな」
手首を強くねじられて力が抜けた俺の右手からナイフが滑り落ち、床に落ちる。
頭に血が上っている俺は左手で勢いよく治朗を殴ろうとして、反対に凄い勢いで治朗に左頬を殴られ、勢いよく部屋の隅に飛ばされる。
頭から壁にぶつかり、目の前に火花が散る。
「………う……」
容赦の欠片もない拳だった。
口の中が切れたのか。
鉄の味が口の中に広がる。
頭がクラクラする。
起き上がれない俺に近付いた治朗は、俺の服の襟首を掴み引き上げると俺の顔を殴り始めた。
何度も、何度も殴り続ける。
殴られる度に、俺の顔も左右に振られる。
鼻から口から血が飛び散る。
殴られている両頬の感覚がなくなっても、治朗は俺の頬を殴り続けるのを止めない。
最初は治朗から放れようと振り回していた俺の両手も今はダラリと力なく身体の両側に投げ出したまま。
-もう、抵抗する気力も萎えた。
そんな俺を見てとったのか、治朗の拳も止まった。
「………オレが婚約したから拗ねているのかな?…それともしばらく相手してやらなかったから怒っているのかな~?…しようがないだろ。なんたってオレ、今、婚約中の身だから」
治朗は俺のズボンを脱がし始めたが、もはや俺には抵抗する気力もない。
「せめて結婚するまでは婚約者に操をたてないと………」
俺は治朗の話を聞いていなかった。
-そんな事より。
もっと重大な……………。
「………彰が……いなくなった………っ」
口に出すと、涙が出てきた。
俺は弱々しく両手を上げて顔を覆う。
-治朗に涙は見せたくない。
ズボンと下着を脱がした治朗は、俺の両足を広げて持ち上げる。
「………お前のせいだ……っ!!」
俺の叫びと同時に、治朗のペニスが俺の中へと突き入れられた。
(…………………………っ!!)
こんな時でもヤラないと気がすまないのか。
(やっぱり………)
-最低なヤツ。
でも、おあいにくさま。
無駄だよ。
-治朗に抱かれていても、今の俺は何も感じない。
そんな俺を見て、治朗が笑う。
俺を犯しながら治朗が声を出して笑っている。
俺は犯されながら治朗の笑い声をボンヤリと聞いていた。
治朗の両肩に乗っている俺の両足が、治朗の動きに合わせて揺れている。
俺はそれをただ、ぼんやり見ていた。
ひとしきり笑った後、俺と下半身を繋げたまま治朗は唇を俺の耳に近付ける。
「………お前は彰に騙されたんだよ」
……………………………………………………え?
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