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第33話

「騙されたんだよ、樹生も………オレも」 「………どういう……意味…?」 「彰のヤツ、惠を連れて逃げやがった」 (……………惠?) 一瞬、誰の事かわからなかったが………。 惠って、あの、高校の時、治朗と寮が同じ部屋だった……黒縁眼鏡の目立たない………。 「………彰は惠とこっそり付き合ってたんだよ」 (……………………………え?) 「高校の時は黒縁の眼鏡と長く伸ばした前髪で目立たないようにしてたけど、彰の素顔はすっげぇ綺麗なんだ……皆に知られないように誰とも仲良くするなと言っておいたのに………オレに隠れて付き合ってたんだよ、アイツら」 「………………嘘………………」 「嘘なもんか、大体おかしいと思わなかったか?オレと樹生の関係はクラス中どころか、全校生徒が皆、知ってたんだぜ?彰だけ気付かなかったなんて事があるわけないだろ」 馬鹿にしたように言われた言葉は、俺の頭を殴りつけるのに充分だった。 (…全校生徒……?) 「……嘘だ………」 「本当だって…樹生は隠していたつもりかもしれないけど、オレは隠さなかったからね」 「………嘘だ……」 俺はその言葉しか言えなくなったみたいだ。 馬鹿みたいに嘘だを繰り返し………。 「ていうか、樹生と関係を持つようにとオレを焚きつけたのも彰だからね……オレはまんまと彰の罠にはまり、彰に惠を取られたってわけだ」 「………嘘だ………嘘だ………嘘だ………嘘だ………嘘だ…」 「オレと樹生が気付かない内に彰と惠はデキていて手に手を取って逃げて行ったと……まさか惠がオレを裏切るとは思わなかったよ」 「……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」 「本当だよ…樹生は彰に売られたんだよ、惠の代わりとしてオレにね……しっかし、彰にはやられた…まさか、オレの婚約期間を狙って逃げるとは」 「………嘘だーーーーーーーーーーっ!!」 -まさか、彰が治朗を焚きつけていたなんて。 高校の頃から俺と治朗の関係を知っていて知らない振りをしていたなんて。 彰と惠がデキていたなんて。 彰と惠が一緒に逃げたなんて。 彰が俺を騙していたなんて。 彰が俺を裏切っていたなんて。 彰が俺に嘘を吐いていたなんて。 ……………………………………………………。 …………………………。 ……………。 惠の代わりに俺を治朗に差し出したのか……………っ!! -床に倒れたまま治朗に犯されている俺の瞳に、床に落としたナイフが光って見えた。 《to be continued ………》

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