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出会い(私)

その真っ赤な髪は、燃え盛る炎のようでした。 誰にも切られず伸びた長い髪が、幼い輪郭を赤々と包んでいました。 薄暗く陽の差さない古小屋で、彼の髪だけが命の色を放っていました。 身動きも取れず燻る小さな炎が、私の目には酷く眩く焼き付いたのです。 こんな場所では雨風も防ぎきれないでしょうに。 碌に食べ物も与えられていないのか、手足は細く今にも折れそうでした。 周囲の人々はあんなにも悠々と肥えていたのに。 この子は、こんな不条理にずっと耐えていたのでしょうか。 初めて私を見上げた小さな瞳は、憔悴し切った身体に見合わないほど鮮やかに輝く新緑の色でした。 息をすることすら忘れてしまうほどに、私はその生命力に強く惹きつけられたのです。 芽吹きの瞳と、燃える髪を持った少年。 私は、彼が『そう』なのだと確信しました。 強く生を望むこの魂を、世界を救う事ができるこの尊い命を。 今すぐここから連れ出して、清く正しく、強く逞しく育てなくては。 巡り合えた喜びと溢れる期待に、私は知らず震えていました。 この子なら、この世の悪を……。 私を殺してくれるかも知れない。と。 私が手を差し出せば、彼は少しだけ眉を動かしてから意識を手放しました。 きっと、もう随分前から限界だったのでしょう。 私は小さなその命を消してしまわぬよう慎重に抱き上げました。 見た目よりもずっと軽い身体は、それでも規則正しく息をしていました。 私は彼の居た場所を塵ひとつ残さず片付けると、彼の生まれた土地を後にしました。 彼を探す人は、もう誰も居ないでしょう。

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