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プロローグ

久々に教会まで戻ってきたな……。 俺は、いつ見ても変わらぬ様子で佇んでいる巨大な建物群を見上げる。 数えきれないほどに建ち並んだ建物の大きさは様々だったが、どれもみな三角帽子のような尖った形の屋根をしていて、それぞれの天辺に大きさも形も様々な十字架が掲げられている。 巨大な正門をくぐってすぐに脇道へ逸れれば、見慣れた風景にどこかホッとする。 「よぉ、マルクスじゃねーか。今帰ったのか?」 聞き覚えのある声に振り返れば、以前同じチームにいたガッサだった。 「ああ、今帰ったとこだよ」 建物の窓から声をかけてきた黒髪の青年は、ひょいと窓を乗り越えてこちらへ近付いてくる。 「最近お前ソロ任務多いよなぁ」 曖昧に頷けば、俺の反応なんてどうでも良さそうにガッサが話を続けた。 「俺ソロ苦手だわー。話し相手いねーのって辛くね?」 相変わらずなその様子に、俺はちょっとだけ安心しながら小さく笑って答える。 「そうだね」 本当は、そんな風には思わないけど。 それをガッサに言うのは……なんだか申し訳なかった。 先輩は、彼にとっても、大事な先輩だったはずだから。 「ちょっとガッサ!? まだこれ済んでないじゃない!!」 ガッサが飛び出してきた窓の向こうから、ガッサに文句を言う女性の声が聞こえる。 この声はチャコかな。 「やべっ、俺仕事に戻るな。マルクスは長旅お疲れさんな! 今日はしっかり休めよーっ!」 俺の肩をポンと叩いてガッサは振り返らずに走り去る。 ほんの一瞬触れられたその感覚に、人に触れられたのは本当に久々だったな、と思った。 急に人恋しさが込み上げてきた俺の中で、先輩の魂が小さく揺れる。 それだけで、俺の心はじわりと温かくなった。 俺はもう、この先ずっと自分が独りだと思う事はないだろう。 先輩の魂は、いつだって俺の中にいてくれるから……。 俺は、ローブの中で揺れる十字架を服越しに掴むと、目を閉じる。 そうして、ここで俺と先輩が共に過ごした最後の日々を、ゆっくり辿った。

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