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act.4

その日を境に、蓮に呼び出される回数が極端に増えた。夏休み中という事もあり、テニスの練習や試合がある時間以外はほとんどと毎日言っていいほど呼び出しを受け、蓮の部屋に入り浸っていた。  性に目覚めたばかりの若い肉体が快楽に堕ちていくのにそう時間はかからなかった。  蓮は相変わらず理人を言葉で責め立て辱めてきたが、身体を重ねる事で得られる悦楽もまた格別だった。  蓮とのセックスに夢中になっている自分が恐ろしかったが、同時にこの上なく興奮している自分もいて、その事実が更に理人を追い詰めていく。  唯一の救いと言えば、何故か蓮は自分以外の人間が理人に触れるのを嫌がり、指一本触れさせないようにしている事くらいだろうか。 山田の話を信じるならば、今までだったら複数人で代わる代わる犯したこともあったらしい。なのに、理人に限っては頑なにそれを拒んでいる。  蓮の家で幾度となく山田と遭遇したものの、蓮の事がよほど恐ろしいのか、特に何かを言われる事もされる事もなかった。ただ一度だけ、蓮に呼ばれて部屋を訪れた時に、理人の身体をじっと見つめてきた事があったが、それでも何も言わずに去って行った。  だから、すっかり油断していたのだ――。  その日は、朝から蓮に呼び出され渋々向かっていたのだが、降りる駅を一つ寝過ごしてしまい約束を取り付けた時間より20分以上も遅れてしまった。  勿論、遅れるとわかった時点でメッセージも入れておいた。 なぜ自分が謝罪しなければならないんだ。とか、このままバックレてしまおうかとか、色々な思いが交錯し理人の歩みをさらに遅らせる。蓮の住むマンションに到着し、躊躇いながらインターホンを押すとすぐにドアが開いて、蓮が顔を出した。 「遅い」  開口一番そう言われ、有無を言わさず家の中へと引きずり込まれる。  玄関に入るなり後ろ手に鍵をかけられ、いきなり壁に向かって突き飛ばされた。 「うわっ、なにす……っ」  壁に当たり、かろうじて身体を支えた理人のハーフパンツを下着ごと一気に引きずり降ろすと、逃れられないように腰を掴んであろうことか秘部に舌を這わせてきた。 「やっ、はっ……やめっ」  突然の事に混乱しながら理人は必死になって抵抗するが、そんな理人を押さえつけ蓮は執拗にそこを舌で攻め立てる。 「ひっ……んんっ、待て、そんなとこ……ヤだ……っ」 「待たない」  蓮は短く答えると、今度は前に触れてきた。舌で刺激しながら緩々と扱かれれば、否応なしにそこは反応を示し始める。 「玄関でケツ舐められてなに興奮してんの? ほんっと変態だよね」 「く、言うなっ!」  羞恥心を煽るような蓮の言葉に思わずカッとなり怒鳴るが、蓮は構わず理人のものをしゃぶり続けた。  じゅぷっ、ぐちゅっ、と音を立てて激しく吸われ、理人は壁に爪を立てながら身悶えた。  蓮の言う通り、理人はいつの間にかこの状況に快感を覚え始めていた。腰が揺れそうになり、身を固くしてそれを耐える。こんなの認めたくない。  玄関でこんなことされて屈辱的だし、恥ずかしくて仕方がないはずなのに、どうして……。 「認めろよ。俺のが欲しくて仕方ないんだろ? ほら、指も簡単に咥え込んでる。案外、慣らさなくてもイけそうじゃないか?」  いきなり指を二本も突き立てられ、内壁を擦りあげられる。痛みを感じる間もなく、快感が押し寄せてきて身体がビクンと跳ねた。 「うっ、あ……っ」 「ここがいいんだろ? ここをこうして……」  蓮の指がイイ所を擦り、堪らず仰け反った。膝がガクガクして立っていられず壁に爪を立てて、何とか堪える。 「ひぅっ……やっ、あぁっ」 「こんな風に苛められたかったんだろ? 本当はこうやっていじめられたくて仕方ないくせに。いい加減素直になれよ」 「あぁっ、やっ……違っ、俺は……っあぁっ!」  蓮は容赦なく前立腺を攻め立てた。ぐりぐりと押され、引っ掻かれ、押し潰される度に身体がビクビクと震える。 「おっと、玄関汚すなよ? 俺がいいって言うまでお漏らしするなよ?」  意地悪く笑いながら、鈴口に爪を立てられ、理人の身体が強張る。 「ひぁっ! やっ、あっ、だめっ……出、る……っ」 「まだダメ」  そう言って蓮は理人の根元をギュッと握り締めた。射精寸前で止められ、ビニールの紐のようなもので根元を縛られて行き場を失った熱が身体の中で暴れ回る。  いつもそうだ、今まで一度だって蓮は理人が勝手に絶頂に達する事を許してくれなかった。  射精を管理され、気が狂いそうになるほどの快感に支配されて泣いて懇願するまで許してもらえず、ようやく解放されても射精を伴わない絶頂に身体が痙攣し、しばらくまともに動く事も出来ない。  そして、その後蓮の気が済むまで散々犯されてしまうのだ。今日もきっとそうなってしまうに違いない――。  絶望的な予感に襲われながらも、理性とは裏腹に今日はどんなことをされるのだろうかと期待にも似た感情が湧き上がって来る自分に気付いてつくづく嫌気がさした。

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