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④何でそんなものを撮っているんだ

  「おはよう、甲斐」  目が覚めれば元の世界に戻ったりしていないかと思ったがそんなこともなく。正岡焔がそう呼びかけてくるのだから自分は黒川甲斐のままなのだろう。  体は清められていたものの、認めたくない部分が少しヒリヒリする。 「まだ思い出せない?」  寂しそうに尋ねられて迷ったが、嘘をついても仕方が無いので頷く。  焔の言葉を信じるなら、正岡焔と黒川甲斐は恋人同士らしい。『炎の戦士フレイム』にそんな描写は無かったのだけど。黒川甲斐の体の反応を見る限り真実と思ってもいいだろう。  自分が黒川甲斐であるということはまだしっくりきていない。夢を見ているか、魂がこの体に飛び込んでしまっただけのような。 「ごめん、焔…………ん?」  チャリ、と鎖の鳴る音が自身の、足元から聞こえた。なんだろう。嫌な予感がして、かけられた布団をそっと捲る。  眠っている間に着せられたのかパジャマを着ているが、それはいいとして。問題は足にしっかりと嵌められた足枷だ。伸びた鎖がベッドの支柱へ繋がっている。 「焔、これは……?」 「俺がきっと甲斐の記憶を取り戻してみせるから」  いや、全然質問の答えになってない。 「甲斐が危ない目に遭わないように、だよ」  確かに記憶のないブラックナイトというのも危険なのかもしれない。だからといってこんなことをする必要はあるのだろうか。 恭しく鎖にキスをする焔の姿が絵になりすぎて思わず見惚れた。  これからずっとこの顔を近くで見ていくのかと思うと、心臓が耐えられないかもしれない。  ……じゃなくて、一旦家に帰らせてもらわないと。 「あの、焔……」 「この間撮った動画があるから一緒に見よう」  そうしたら何か思い出せるかもしれないから、と続ける。こちらの言葉はまるで通じそうにない。  ベッドから見える位置にあるテレビは大きくて、あれでフレイムを見たら迫力があるだろうななんて考えているうちに焔がリモコンを操作する。  まあその録画したものを見れば焔も満足するだろうし。見終わってから説得すればいいかとテレビに目を向ける。  直後、どこかで聞いたような声が聞こえてきた。 『あんっ……ほむ、ら』 『甲斐、愛してる』 『おれも…………あいしてる』  大きな画面に映し出されたのは裸体の男二人の絡みであった。 「ほ、焔!これは……」 「甲斐と俺のセックスだよ」 「セッ……」  何でそんなものを撮っているんだ。

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