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第5話:進捗は順調です

 喉が渇いた。柳さんに飲まされたアイスティーの効果は少しずつ薄れていっているようだった。 「み、みず……」  口回りの筋肉をフル稼働してそれだけ発した。 「ああ、ごめんね、すぐ取ってくる」  その声音は、親が子供の忘れ物を取りに帰るようなライトさと不気味な優しさがあった。 ——俺、このままやられて殺される?  そんなことすら考えた。  だって、あんなに優しくて穏やかだった柳さんが、俺にこんな、こんなことを—— 「はい、これ市販ので何も入ってないから安心して飲んで」 「う、うぅ」  蓋は柳さんが開けてくれたので、俺は粉骨砕身の努力で右手を上げ、ミネラルウォーターを一気にぐびぐびと飲んだ。  それでも俺の身体はまだまだ熱く、むしろ下半身はより一層温度が上昇しているように感じられた。 「じゃあ続きね。悪いけど下着はまだ脱がせられない。ちょっと気持ち悪いかもしれないけど我慢して」  俺は後ずさろうとしたが遅かった。柳さんが俺に覆い被さり、鎖骨をなぞり、右手は胸、左手は下腹部をゆるゆると動かし始めた。ローションの垂れていない鎖骨を柳さんが舐めると、俺は思わず大声を上げてしまった。 「ここ弱いんだ、覚えとこ」  言うと柳さんは左右両方の鎖骨をゆっくりと吸ったり舐めたりし始めた。 ——なんで?! こんな所が、気持ちいいもんなのか?! 「あ、ああ、はぁ、あああぁぁ!」  胸を弄る指はやはり先端には触れてくれなかった。って言ったら俺がそれを望んでいるようだけど、俺の頭は98%快楽に溺れていたから、本心を言えば触れて欲しくて仕方がなかった。 「あっ、む、無理っ! あん、ダメ、もう、俺……!!」 「触って欲しいんだ」 「ん、んん、は、はい……」 「へぇ、どこを? どういう風に?」  無慈悲か!! とか内心でツッコミを入れたがそんな場合じゃない。  身体も頭も限界だった。 「む、胸触って! ちゃんと触ってぇ!!」 「違う」  柳さんは初めて剣呑な声を出した。 「きみ、お願いしてる立場でしょ? 敬語くらい使わなきゃ」 「……えっ、あの……」  な、何だよ、その要求っていうか強制——。  でも、ダメだった。俺は快楽という底のない穴に片足を突っ込んでいる状態だった。 「はっ、あ、む、胸の、先、触ってく……ください」 「素直でよろしい」  次の瞬間、右の突起に指があてがわれ、思い切りひねられたので俺はまた嬌声をあげた。しかし、反対側は柳さんが口に含んだ。 「え、え、え?! あ、ああぁ! 吸って! もっと吸って!!」 「だから敬語だって」 「あ、あぁん! 吸って、くだ、さいっ!」 「よくできました」 「ひぁあ!」  信じられなかった。男でも胸で感じるものなのか。  柳さんの声はどこまでも澄み切っていて優しく、まるで俺の成長を見守るかのような様子だった。 「凄いな、腰ヤバいよ、大津くん。もしかしてヴァージン?」 「ん、ん、んっ!」  柳さんの問いには応えられなかった。一度射精したとはいえ、上半身をこれだけ、しかもローションというおまけ付きで撫で回されているのだ、然るべき箇所だったうずくし触れて欲しくなる。俺の目尻には快楽ともどかしさによる涙が貯まっていた。

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