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第14話

あれ、この前の授業で作った提出作品が無い。 春眞は前回の実技演習の授業で作った作品がない事に気づいた。 休みの日、実技の練習をしようと先生に許可を取り実技室を使っていた時に気づいた。演習では作品を置いておく棚が各自に振り分けられるがそこに片付けたはずの作品がない。すでに授業で提出し終えた作品はあるのに、今度、提出の作品だけが無いのだ。 「辰巳、俺の作品がない。この前棚に片付けたのに。」 「え?、自分の机は?引き出しとかさ」  少し離れた所に設置された机に座って本を読んでいた辰巳に話かける。  自分の技工机に向かい上から順に引き出しを開け作品が入っていないか探すが入っているのは道具だけで他は何もない。 「ない、俺が棚に片付けたの辰巳も見てたよね。」 「先週の授業の時だよね。確かに片付けてたよな。」 「でもないんだ。」  焦った様に春眞が言うと辰巳が読んでいた本を持ったまま、立ち上がり棚の方へ来た。そして春眞の棚を覗く。 「ないな、先週の作品だけ。」 「どうしよ、今から作ったら間に合うかな、時間無い。」 「無理だろ、さすがに。提出明日だろ。」 「どうしよ、俺ちゃんと棚に戻したのに。」 「ゴミ箱確認しようぜ、あと皆の棚ちょっと見てみよ、間違えて入れたかも。」  辰巳の言葉に従い、隣の棚の段から棚を確認していくが春眞の作品はやっぱりない。次の続き部屋の隣の部屋へ行き、演習用に置いてあるゴム手袋を着けてゴミ箱をかたっぱしからひっくり返し探すがどこにも無い。 「どうしよ、これ提出しなかったら学期末のテスト受けられないって先生いてったよな。」 「落ち着けって春眞、あと探してない所あったけ。」 同室に設置されたシンクで手を洗いながら辰巳が言う。 「棚の近くに資源ごみのごみ置き場あったよな。そこは?」 辰巳の言葉に演習室へ続く扉を乱暴に開け棚の近くに置かれた資源ごみの中を漁る。するとグシャグシャにされた紙があり手に取ると紙の割に重く、何か包まれている感じがする。  春眞を追って辰巳も部屋に入ってきて春眞の手元の包みを見る。  春眞が紙を広げるとそこには春眞の作品が入っていた。 「よかったーー。俺単位落とすとこだった。」 「でもおかしいよ。ゴミ箱にしかも紙に包まれてるなんて。誰かがわざとやったとしか思えない。」 「だよな、俺もそう思う。さすがに怪しすぎ。悪意を感じるよ。」  辰巳の言葉に春眞も同意する。紙に包んでゴミ箱になんて捨てるわけない。誰かが春眞に嫌がらせをするためにやったとしか思えない。 「先生に言っておこうぜ、2回目が起こったらどうしようもないし。」 「そうだね、さすがに言った方がよさそう。」  そう言うと春眞は担当の講師にメールを打つ。すぐに変返信が来て部屋に来て詳細を話す様に言われた。 「俺ちょっと呼ばれたから行ってくる。先生が詳細教えてって。」 「俺はもう少しいるわ、行ってらっしゃい。後で話聞かせてな。」  春眞は荷物を纏めて講師の部屋に向かった。

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