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12 甘い交わり

 安い挑発に乗られて、こっちの方が戸惑う。先ほどまで怒っていたはずなのに、マジな顔をされて返事に窮した。 「っ、良輔」 「ヤるんだろ」  良輔の腕が、俺の肩を押す。ベッドに背中を押し付けられ、覆い被さってきた。  ドクン、心臓が鳴る。考えてみれば、同じ相手と寝た回数は多くない。もう一度会おうと誘われたことはまま有ったが、応じたことはなかった。  良輔の唇が瞼に触れる。優しい触り方を揶揄しようと思ったが、「好きにさせろ」と言われた手前、黙っておく。  唇が頬に触れ、耳に触れる。耳を甘く噛まれ、舌が這う。  良輔の手が、シャツのボタンを外した。躊躇などミリほども感じない動きで、シャツをはだけて肌を露にされる。 「ん……」  甘い声が、唇から漏れた。吐息を吐き出し良輔を見る。金色に染めた髪の根元が、少しだけ黒い。顔に触れる髪は案外柔らかかった。 「あ、良輔……っ」  首筋に舌が這う。ぞくぞくと身体を震わせ、甘い声で良輔を呼ぶ。腕を伸ばし、肩を引き寄せる。  キスしたい。良輔の薄い唇に吸い付いて、舌を絡めたい。唾液を混ぜ合いながら、溺れるようなキスをしたくなった。  だが、良輔の指が唇を押さえる。柔らかく微笑んで拒絶され、ムッとする。  また、お預けらしい。 (なんだよ、キスくらい……)  ケチなヤツ。  良輔は不満そうな俺を無視して、シャツを取り払うとベッドの下に投げ捨てた。裸になった胸を、手のひらが撫でる。そのまま、ズボンも下着ごと脱がされる。あっという間に裸にされてしまった。 「は……」  撫でられる感覚に、身体が熱くなる。優しい愛撫だ。良輔はさわさわと皮膚を撫でながら、唇を鎖骨に当てる。ちゅう、と吸われ、ピクンと反応してしまう。舌が、鎖骨をなぞるように舐め上げ、何度も皮膚にキスが花を咲かせた。 (う、んっ……、気持ち、良い、けど……)  気持ち良いが、こんなに優しく抱かれたことなどないので、戸惑いの方が大きい。じわじわと、弱い快感がさざ波のように繰り返す。  やがて良輔の唇が、胸の突起に触れた。ちゅ、と弱く吸われ、舌先で軽くツンツンとつつかれる。もどかしさに、腰を捻る。 「あっ、あん……っ」  ぷくりと尖った先端を、舌が愛撫する。乳輪を丹念に舐められ、何度も吸われる。乳首の先がジンジンと痺れるような甘さを訴えた。 「あ、あっ」  嫌と言うほど乳首を舐られ、快感に肌が赤くなる。良輔の指が乳首摘まんだり、先端を引っ掻いたりする。舌で押し潰し、歯を立て、また吸われる。 「ふっ、ん……っ、良輔、そこばっかじゃっ……」 「良いから」  もっと他も触って欲しいのに、またちゅうっと吸われる。  びくん、身体が跳ね、息が上がった。既に俺の性器は勃起して、先端から蜜を溢している。 「あ、あっ……ん」  気づけば、良輔に翻弄されている。こんなことになるなんて。  唾液を口から溢しながら、ハァハァと息を乱す。ちゅぷっと音を立て、良輔の唇がようやく離れた。ぬらぬらと唾液で濡れた乳首が、いやらしく光る。  良輔はそのまま下へと顔をずらし、腹に唇を寄せた。まだ、焦らされるらしい。 「う、んっ……、良輔、良輔……」  舌が腹を舐め、腰に触れる。手のひらが胸や腿を滑り、全身を愛撫されている。 「こんな、細いのに」 「んぁ、ん?」 「……そのままで、良いだろ」  良輔が何か言っていたが、頭に入ってこなかった。触れられた部分が、熱くなる。疼く。  痺れるような快感に、甘い声しか出ない。 「ふ、ん……っ、良輔……」  太股にキスされ、ビクッと膝が揺れた。唇は許してくれないのに、全身にキスをされる。甘い快楽に、頭がくらくらした。  ぐっと、脚を捕まれ、ドキリとする。期待に視線を良輔に向ける。  早く。早く。  今すぐ、良輔が欲しい。深いところまで繋がって、メチャクチャにされたい。 「はぁ、はぁ……っ、良輔……」  誘うように、名前を呼ぶ。  良輔は両足をグイと拡げ、脚を掴んで持ち上げた。 「ひぁっ?」  膝を胸まで持ち上げられ、驚いて変な声が出る。尻を天井に向けられる。 「んっ」  上から貫かれるのか。それも良い。体勢は苦しいが、激しく犯されるのは好きだ。  良輔の顔が尻に近づく。羞恥心で、顔が熱くなる。そんな間近で見られるのは慣れていない。  良輔の親指が、アナルを抉じ開けるように添えられた。ヒダを左右に割り開く。 「え、ちょっ」  戸惑いながら、足の間から良輔の顔を見る。舌が、アナルに触れた。 「っ!」  ビクッ! 激しく震える身体を、良輔はしっかりと脚を掴んで暴れないようにする。 (――っ!)  顔が熱い。俺、なにされてる?  舌がぬらぬらと、アナルの表面を舐める。快感に慣れきった淫らな穴が、淫靡な光景にいやらしく蠢いた。 「あっ――、あ、あっ」  良輔に、アナルを舐められているという状況に、罪悪感と背徳感が沸き上がる。ビクビクと足を震わせ、結果としてバタついた脚を良輔は黙らせるようにグッと掴んだ。 「っ、良、輔……っ」  ぬっ、と舌先が穴の入り口をこじ開ける。信じられない。羞恥と快感に涙が滲む。見知った顔にそんなことをされるなんて。  ちゅぷちゅぷとアナルをいたずらに舐られ、反応した性器がピンと天井を向いた。舐められているだけでイってしまいそうだ。思わず手を伸ばし、自慰してしまおうかという手を、良輔が防ぐ。 「っあ」 「イきそうなの?」 「っ、気持ち、良いっ……」  素直に頷く俺に、良輔は「そうなんだ」って顔で俺を見る。良輔は舐めるのを辞めると、据え置きのローションパックを切って手に取った。くちくちと粘液を指に絡め、アナルに這わせる。入り口を指先でくすぐられ、ビクビクと震える。 「渡瀬、手、こっち掴んでて」 「え?」  自分の性器に導かれ、握らされる。 「イかないで」 「――マジ?」 「うん」  一度抜いてしまいたいくらいなのに、そんなことを言われて顔を引きつらせる。良輔はお構いなしに俺の性器をぎゅっと握らせる。このまま弄って、イきたい。けど、それをしたら、続きをしてくれない気がする。 「くっ――……」  本当に、良いようにされて、悔しいような、恥ずかしいような。 (何だよ、良輔のヤツ……本当はSの才能があるんじゃないの?)  温厚な人間の方が、案外そういうものなのだろうか。ガチガチに勃起しているのにイくことを許されず、余計に興奮する。  良輔は指をつぷっと第一関節ほど挿入して、浅い部分で抜き差しを始めた。 「んぁ、ん……」 「感じるの?」 「ん、ぅん……」  単純な好奇心から聞くように、良輔が問う。指をぐっとねじ込み、今度は深い部分を弄られる。 「何処が、感じるの?」 「っ……、その、もうちょっと、手前……。っあ! そっ、こ!!!」  がり、と強く擦られ、悲鳴のような声が出る。指がぐりぐりとそこばかり押してくる。 「あっ! あ、あっ! あ!」  激しい快感に、頭おかしくなりそうだ。今すぐ射精したいのに、自分で性器を握ってそれを止めている。 「っあ、あああ、良輔っ、あっ!」  にゅっと指を引き抜かれ、ビクンと震える。ガクガクと膝が震える。 「――っ」  カァと、顔が熱くなる。  良輔に、良輔相手に、ドライでイかされるとか。  握ったままの性器から、今にも精液が溢れそうだった。先端から僅かに漏れる粘液で、性器はぬらぬらと濡れている。 「ここだけ?」 「んぁ! っ良輔……!」  再び指を挿入され、ビクッと肩を揺らす。敏感になった内部を擦られ、眦に涙が浮かんだ。  良輔は指を増やして、ぐちょぐちょと指を無作為に動かす。そんな風に動かされたら。 「あ、あ、ダメ、良輔っ」 「これは、イヤ?」 「っ――、あ、あたま、変になるからっ……!」 「浅いトコと、奥のコレ?」 「っく、んっ!!」  もう、本当に信じられない。さっきから、良いところばっかり。  握った性器が爆発しそうだった。涙目で良輔を見上げる。 「良輔、イっても良い? 良いよな?」 「……ダメ」 「っ、お願い、良輔っ……」  イきたいと言っているのに、良輔はハァと甘い溜め息を吐いて、指先で俺の先端をつついた。ビクッっと身体に電流が走る。無理。耐えられない。 「まだ指だけだろ。いつもは、もっと凄いオモチャとか咥えてるくせに」  そう言って良輔は指をぐちゅぐちゅと動かす。耐えきれず、こぼれた精液で手が滑る。 「ひぅっ!」  手から性器が離れて、どぴゅぴゅっ! と精液が飛び散る。腹にシーツに、手に精液が掛かる。良輔にもひっかけてしまった。 「あっ―――……」  射精の快感と、勝手にイってしまったという罪悪感が同時に襲ってくる。不安な顔で良輔を見る。良輔が自分の手に着いた精液をぺろりと舐める。良輔が俺のを舐めたという事実に、酷くいたたまれなくなって唇を結んだ。 「良……」 「先にイくなって」 「っ、ごめ……」  反射的に謝った俺に、良輔が笑う。良輔は据え置きの箱を覗いて、唇を曲げた。備え付けのコンドームのサイズでは良輔には合わないだろう。諦めたらしく、自身の濡れた先端をアナルに押し当てて来た。 「っ、良輔……」 「挿れるぞ」  やわらかくなった穴に、良輔の巨大な肉棒が押し当てられた。

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