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31 結局は甘い

「あ、んっ……。ちょっと……」 「舌、出して」  言われるままに差し出した舌を、良輔の舌がつつく。草むしりで汚れた手足を洗うだけなら、風呂までは必要なかったのだが、二人きりの時間の名残惜しさに、ついくっついていたいと思う。 「あ、ぅん……」 「こっち、座って」 「ええ?」  腕を引っ張られ、良輔の方に背を向けさせられる。浴槽に腰かけた良輔の膝の上に座らされた。 「乗せてたい」 「ちょっと」  何か、恥ずかしい。背後から抱き締められ、耳元や首筋にキスをされる。本当に風呂にはいるだけのつもりなんだろうか。腕に手を伸ばし、さわさわと触れられ、ゾクゾクと皮膚が粟立つ。 「ん、良輔……」  まさに『イチャイチャ』って感じのスキンシップだ。今まで突っ込むばかりのセックスをしてきたが、こういう触れ合いが気持ち良いと気づかされる。 「う――、あっ」  腰をぐいっと押され、思わず声が出る。両手の親指で押し込まれ、疲労した筋肉が刺激される。本当に揉んでくれるつもりらしい。 「気持ち良い?」 「う、んっ、ソコ……良い」  手の力が強い良輔のマッサージは、思いのほか気持ちよかった。リズミカルにグイグイと押されて、思わず吐息と共に声が出る。 「あっ、ん、あー……」 「……」  良輔も疲れているだろうに、悪いな。と思いながらも、気持ちよくて「もう良いよ」と言い難い。 「はぁ……、ん……、ん……?」  すっかり気持ちよさに瞼まで閉じていた俺は、ふと尻に硬いものが当たるのに、目を開けた。 「……おい」 「仕方がないだろ。お前がエロい声出すから」 「マッサージだろっ」  俺に反応してくれる嬉しさを押し隠し、今日はしないとアピールする。俺だって良輔とイチャイチャしていたいけど、今から運転して帰るのは俺だ。だというのに、良輔は後ろから手を伸ばし、乳首に指を這わせる。 「んぁっ、良輔……っ」 「擦るだけ」 「っ」  そう言って、俺を立たせると、脚の間に自身を挟み込んできた。背後から擦られ、気持ちよさにビクッと震える。 「あっ」  壁に手をついて、後ろから突かれるリズムに合わせるように身体を揺らす。良輔が腰をぐっと掴んだ。 「んぁ」  良輔の親指が、いたずらにアナルを押し拡げる。中を、覗かれているようだ。 「ちょっ……良輔っ……」  カァと顔を熱くして振り返って睨む。良輔は欲望を孕んだ顔で、じっと穴を見ていた。 「ホントは、こっち使いたいけど」 「……」  ああ、クソ。 (ここで断ったら、ビッチの名折れじゃん)  尻を高く上げ、良輔を挑発するように両手で尻を掴む。良輔がぐっと息を呑んだ。 「……良いよ。挿入れて。その代わり、中に出すなよ」 「っ……」  良輔は一瞬迷ったようだったが、結局肉棒の先端を押し付け、ゆっくりと中に入ってきた。昂った性器が腸壁をゆっくりとひっかく。奥までぐっと押し付けられ、ハァと息を吐いた。 「んっ……」 「渡瀬……、可愛い……」 「ばか……」  どこが可愛いんだ。こうやって脚を開いてしまうところだろうか。  ぐちゅぐちゅと中を擦られ、気持ち良さに負けてしまう。喘ぎ声を上げながら腰をひねり、良輔に手を伸ばす。 「良輔……っ」  ぐりっと中を抉られながら、身体の向きを変えさせられる。腿のあたりをぐっと持ち上げられ、壁に押し付けられた。脚が、地面から浮く。 「ひ、あっ!」 「ハァ……、キス、させて」  んむ、と声が飲み込まれる。不安定な体制に、良輔の首にしがみ付いた。自重で深く突き刺さり、下から突き上げられる。 (こ、のっ……)  無茶な体勢に、興奮しながらも軽い怒りがわく。そもそも、しないと言ったのに。無茶しやがって。 「っ、お前っ、このあと運転して帰るって、解ってんのかっ……っ」 「ゴメン。後で埋め合わせするから」  ぐりっと、奥を抉られ、声にならない悲鳴を上げた。 「っ――!!」  喉元に、良輔が噛みつく。  そもそも、マッサージしてくれるそぶりをして始まったというのに。 (やっぱ、良いヤツとか嘘かも……)  少しだけ良輔に対する評価を改めながら、俺は結局、欲して貰えることが嬉しくて、良輔の思うままにされてしまったのだった。

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