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承・喧噪に紛れて

 弐  今日はいつもよりゆっくりしすぎたかもしれない。ぎらついたお天道様の陽光が千景の白い肌を刺す。 「花、花はいりませんか」  ガマの油売りに魚売り。茶見世など、江戸の町はとても賑やかだ。  自分の声なんか簡単に掻き消されてしまうほどの喧噪が続くその中で、千景はいっそうの声を張り上げる。 「なあ、お前。ひょっとして目が見えないのか?」  懸命に花を売る千景に声をかけてきたのは若侍だった。  見下すような口調が千景を嫌な気分にさせる。  若侍は一人ではないらしい。いくつもの含み笑いが聞こえた。 「どれ、このおれが手伝ってやろう」  若侍は言ったが、手伝ってくれるような素振りではない。 「結構です」

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