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破・逢ひたし
「千景、千景! お願いです、どうか後生ですから……」
「うるせぇ母親だな!」
「あっ!」
ごろつきの一人がそう言った直後だ。何かがぶつかる大きな音とお仲の呻き声が聞こえた。
「かかさん!!」
千景はパニックを起こした。
「かかさん! お願いです。どうか、かかさんに乱暴しないでください!!」
懸命に手を伸ばし、お仲がいるだろうそこに身を乗り出す。
しかしごろつきたちはそれを良しとはしない。千景を引き摺り、どこかへ連れて行こうとする。
これから自分は男娼になる。
そうなればもう二度と虎次郎と会えない。
それを考えた時、千景の脳裏に、虎次郎が思い浮かんだ。
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